面司の北沢美白さんによる「豊橋文化奨励賞」受賞記念作品展 代表作ほか舞台写真なども

2026/10/10 00:00(公開)
個展を開いた北沢さん=いずれも三の丸会館で
個展を開いた北沢さん=いずれも三の丸会館で

 豊橋市出身の面司、北沢美白さんによる受賞記念作品展「不失花(うせざるはな)」が、同市の「三の丸会館」で開かれている。能面をはじめ、障壁画、陶芸、茶道具といった多彩な意欲作が一堂に並ぶ。豊橋文化振興財団主催で、12日まで。

 

 北沢さんは国重要無形民俗文化財「豊橋鬼祭」の神面新造や国立能楽堂本式舞台への起用などで2025年度の「豊橋文化奨励賞」を受賞した。

ファンでにぎわう会場
ファンでにぎわう会場

 能面の展示では、能楽堂発行の2023年カレンダーにも採用された「平太」をはじめ、「翁」「深井」「般若」といった代表作とともに、能楽三大流派の一つである杉浦家の協力を得て自身で撮った舞台写真を並べた。「壁に掛かった状態では一般の方が面の良し悪しを判断するのは難しいが、舞台で実際に使われた姿を示すことで、生命感や違いを実感してもらえるのでは」と北沢さん。

 

 面の造形には17世紀の明暗主義の影響が見られ、当時の日本人を7~8頭身に見せるち密な計算が施されている。さらに能面は、謡(うたい)の声を響かせる「楽器としての要素」を併せ持つ。北沢さんは「代々の能楽師ほど表面の出来栄え以上に裏の刳(く)りや彫り、塗りがもたらす音の響きを注視する」という。面の陰影部に周囲の光や色が映り込む「鏡仕上げ」を施した作品では、見る人が本能的に血の通った生身の肌と認識する質感が確かめられる。

 

 能面以外に、豊橋鬼祭神面奉製に関する写真、尾形光琳作「燕子花図屏風(びょうぶ)」の写しなども展示。茶室では、自ら手掛けた道具で客をもてなす茶席の空間を再現した。京都の昭楽窯で初代長次郎の技法を追究した黒楽茶碗(ちゃわん)をはじめ、赤楽茶碗、茶道具、茶掛けなどこだわりのしつらえを披露した。「自作道具によるもてなしは20年来の念願だった」と北沢さんは感慨深げに話す。

 

 会場は、ふすまを取り払って一続きとし、美しい庭とともに作家の世界観が楽しめる空間に仕立てた。「豊橋だからこそ自由な発表がかない、長年の夢が結実した」と故郷への深い謝意を示した。

 

 午前10時から午後4時半。入場料は一般1000円。10日と12日には北沢さんによるギャラリートークもある。問い合わせは豊橋文化振興財団(0532・39・5211)へ。

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田中博子

 愛知県豊橋市生まれ。大学卒業後、校閲記者として入社。1年後に報道記者に転身した。2020年から報道部長。芸術、福祉、経済・奉仕団体などを担当する。趣味は、かなりジャンルに偏りのある読書と音楽鑑賞。思考のそっくりな一人娘と趣味を共有している。

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