高校時代は県内屈指の強豪の中部大第一高校に進学。最初は練習量の多さに苦しんだが、努力は実り、高校３年時には５０００㍍では14分22秒の自己ベストをマーク。学校対抗駅伝では愛知チームの１区を任され、区間賞を獲得した。一方、その年のインターハイでは予選敗退。「全力を尽くしたのに結果が出ず、涙が止まらなかった」。初めて味わう大きな挫折に心は折れかけた。その時、母からかけられた言葉がある。「毎日頑張っているだけで偉いんだから」。阿部は「練習するしかない」と夢の箱根駅伝の舞台に立つために気持ちを立て直した。

「淡々と走れる」と評価　大崎監督

　山梨学院大を選んだのは、高校の監督を通じて大崎監督の存在を知ったからだ。シード権を狙う雰囲気の中で、自分を成長させたいと考えた。「練習についていくだけで精いっぱい。レベルが違った」と苦笑する。だが夏合宿で30㌔走などを重ね、１万㍍のタイムは４月の30分08秒から11月には29分17秒へ、半年で30秒以上縮めた。

　10月の箱根駅伝予選会では、阿部選手が日本人最高の45位と健闘。チームは全体３位で本大会出場を決めた。本大会の８区の起用は「まさか」という思いだったが、粘り強く走り切り、区間３位。阿部選手は「絶好調ではなかったので驚いた。１年目に思い描いた以上の結果でうれしい」と笑顔を見せた。

　大崎監督は、阿部選手の走りを「練習ではエース級の選手に比べて目立たないが、本番で予想以上の力を出せる。自分の体をよく知っていて、淡々と走れる。大物になると感じた」と評価する。監督車から声を掛けると、手を挙げて応える。後ろ姿は頼もしく、自信に満ちていたという。「故障なく練習すれば、将来はチームのエースになれる」と期待する。

8区で区間賞が目標

　今年５月の全日本大学駅伝予選会では、チームは14位で初の本大会出場を逃した。阿部選手も調子が上がらず、２組34位。納得いく走りには程遠かった。「後半の粘りをアップさせたい」と課題は明確だ。「まずは予選会を突破して箱根駅伝のシード権獲得。前回の箱根は後半でタイムが落ちたので、ペースを保って８区で区間賞」と意気込んでいる。