【柳双魚の釣ったり釣られたり】秋刀魚の目に泪

2024/11/08 06:00(公開)

 サンマの季節。いつもの行きつけの店で一杯やり、常連客とカラオケで盛り上がっていたら、飲み友達の建設コンサルタント会社会長から突然の電話があった。「なじみの小料理店で飲んでいるが、脂の乗ったうまいサンマがある。今から焼いて持って行く」という。

 

 サンマの塩焼きはボクの大好物。固い頭は食べないが、それ以外は中骨も内臓も残らず食べる。おこぼれを待っている猫が気を悪くするほどだ。それを覚えていてくれたらしい。

 

 今年は当初、サンマが豊漁といわれたが、その後、平年並みと判明。物価高騰の余波を受けて値段も高い。わが家でも先日、スーパーで購入したサンマの塩焼きが食卓に乗ったが、痩せて貧相だった。脂の乗ったうまいサンマなら、ぜひ賞味したい。

 

 だが、この時は周りに常連客が数人おり、まさか自分一人だけ味わうわけにも行かず、涙をのんで辞退した。

 

 すると数日後、再び会長から電話。だが、この日もたまたま携帯電話を家に置き忘れて外出しており、着信に気づいた時は真夜中。またしても食べ損ねた。

 

 どうやら今年は、うまいサンマに縁が薄いらしい。林芙美子の「放浪記」を歌った村上幸子の同題の歌の一節が頭に浮かんだ。

 「束ねた髪に ほこりをためて 一皿五銭の菜を買う…青い 青い秋刀魚(さんま)の目に泪」

 

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