亡き父の愛した蔵書、亡き祖父の遺した長屋を生かし、豊橋市内の女性が東田町に私設図書館「ともす図書館」を、父の誕生日である17日にオープンさせる。本を開き語り合う場所、温かく明るい「心の明かり」をともしたいと名付けた。14日にはプレオープンとして午前10時から午後5時まで館内をお披露目する。
館主は板倉由美子さん。祖父が建てた実家裏の三軒長屋の一部を改装した。正式名称は「白井正雄記念館 ともす図書館」。2021年に85歳で亡くなった父正雄さんが遺した「本は一冊一冊大切に買い求めたもの。地域や次世代のために役立ててほしい」というメッセージを受け、その志を形にした。
1年前から検討を始め、昨年10月からオープンに向けて動き始めた。板倉さんも正雄さんも電力会社に勤務していたことから「こころにあかりをともす ともにする、ともに育む」を図書館のコンセプトにした。
開放感のある室内には、カウンターと大きなテーブル、天井まである書棚を設置。生前「ぼくの命より大事」と言っていた正雄さんの蔵書を中心に、古典文学や純文学、哲学、歴史、宗教、心理学から、歳時記や辞典まで多彩なジャンルの本がずらり。板倉さんも図録や哲学書、漫画、絵本などを持参した。その数約2000冊。その中には正雄さんの句集「山登る」や風景を描いたスケッチブックも。
「これでもまだ蔵書の2~3割」と笑う板倉さん。本は入れ替えたり増やしたりするほか、「来館された方が分かち合いたい本があれば、一冊だけメッセージを添えて寄贈していただくシステムもつくりたい」と語る。
かつて近隣住民が縁台に集まり、語らいの場だった地域の風景を取り戻したいと考える。長屋時代の建具を一部残すことで、温かみのある空間を造り上げた。「建物がどんな本を求めているのか、感覚を頼りに並べた。ここにいると父と対話している気分。家族も喜んでいる」と話す。
コーヒーなどを楽しみながら読書できるほか、学生の自習や在宅ワークにも対応できるようフリーWiFiなどを完備したデスクスペース、小さな子が座って絵本が読める場所も作った。
100インチのプロジェクターも備え、今後は映画鑑賞会や対話の会など、本を介した緩やかなつながりを育むイベントも計画しているという。板倉さんは「父の思いを通して、近隣や地域社会との新たなネットワークができるのでは」と期待する。正雄さんは55年分の日記とともに、蔵書に関するノートを100冊遺しており、「残りの人生で父の思索をたどっていきたい」とも。
開館は月曜、金曜、土曜の正午~午後5時。豊橋鉄道市内線「競輪場前」電停から徒歩5分。駐車スペースもある。利用料はワンドリンク付き500円(幼児から中学生は無料、飲料代別途)。イベントはインスタグラム=QRコード=で随時知らせる。
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愛知県豊橋市生まれ。大学卒業後、校閲記者として入社。1年後に報道記者に転身した。2020年から報道部長。芸術、福祉、経済・奉仕団体などを担当する。趣味は、かなりジャンルに偏りのある読書と音楽鑑賞。思考のそっくりな一人娘と趣味を共有している。
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