「ほの国」閉店の衝撃㊤

2019/11/19 00:00(公開)
築45年余が経過し、耐震性に懸念がある点も閉店判断に結び付いた=豊橋市駅前大通で
結実しなかった「地域密着」

 373―。2012年3月、ほの国百貨店は「豊橋丸栄」から社名と店名を変えることにした。どんな名前がいいか。一般公募した。冒頭の数字は、その際に寄せられた応募数だ。
 地方に根差したデパートになりたい、なってほしい、との期待を示す応募数でもあった。
 多くの候補名から選ばれたのが「ほの国」だった。
 東三河は大化の改新以前から「穂の国」と呼ばれており、そこから社名・店名として選んだものだった。
 「ダサい」。そんな声もあった。しかし、公募も採用した名称は「地元に根付きたい」との思いが強かったからだ。古来からの土地の呼び名を店名に選ぶことにためらいはなかった。「ほの国」は再スタートを切った。
 だがしかし、来年3月で閉店するに至った。

地方百貨店への逆風

 ほの国百貨店は、1974年10月に名古屋市の老舗百貨店・丸栄のグループ会社として開店した豊橋丸栄を前身としている。豊橋丸栄は2010年に4年連続の最終損益を計上するなどしたことから名古屋・丸栄の傘下から離脱。一時投資ファンドに売却された後、役員や従業員が出資・設立した新たな「豊橋丸栄」として再生し、地場資本のデパートに生まれ変わった。
 新・豊橋丸栄は地元の広小路発展会や豊橋市と連携して中心市街地の活性化に取り組んで「地域密着」の基本方針を掲げた。豊橋鉄道とタイアップも進めた。「地元密着の素地」は豊橋丸栄時代から培ってきた。
 ほの国百貨店は地元密着と「東三河唯一のデパート」を前面に出して営業を続けてきたが、人口減やインターネット通販の普及・拡大など吹き荒れる全国的なデパートへの逆風に抗い切れず、廃業に追い込められた。また名古屋駅前のデパートに客足を奪われたことも見逃せない。逆風は地方のデパートには特に強烈だった。
 発足当初は70億円ほどの売上高を確保したものの、2019年2月は50億円余。売上総利益は10億円を割り込んだ。経常利益はマイナスを計上。債務は超過した。
 「地域密着型の経営」を目指したほの国百貨店だったが、期待には結局応えきれず、目論見は潰えた。

 来春3月15日に閉店するほの国百貨店。豊橋丸栄時代から45年の歴史に幕を下ろし、豊橋の町からデパートが消える。衝撃は大きい。「ほの国、閉店」を3回に分けて考える。
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