「第152回中日旗争奪全三河高校野球大会」の決勝で、豊橋西が三好を5対0で下し、初優勝した。創部42年の快挙だ。躍進の裏側にはこれまでの関係者の絶え間ない努力があった。
2018年に就任した前監督の林泰盛さんは、メンバー集めに奮闘していた。新チームが発足したが、部員は7人。「試合はハンドボール部の生徒を助っ人に呼んだ」と振り返る。グラウンド周りに雑草が生え、マウンドもなく、他校に比べて整っているとはいえなかった。そこで、20年の新型コロナウイルス禍の休校日を利用し、林さんらがグランドの一角に土を盛り上げ、土留めブロックを置き、手作りのマウンドを作った。
地区予選やリーグ戦で勝てない日々が続いたが、林さんがしきりに伝えてきたことがある。「人間的成長なくして野球は成長はない」。あいさつや整理整頓、時間厳守、心遣いができていない選手には徹底的に注意した。「野球を通じて、将来立派な大人になってほしい」との思いが強かったという。
結果が出始めたのが22年。バントや走塁など小技を使った泥臭い攻撃が光り、春のリーグ戦で豊川に3対1で勝利。「このままいけばもっといいチームになるなと思った」と手応えを得た。その夏の県大会では3年ぶりに初戦突破、24年の同大会では3回戦に進出し、少しずつレベルアップしていった。「目標が夏の県大会出場だったのが大会1勝になり、ついに甲子園出場となった。当たり前の基準が上がっていった」と振り返る。
今年度から佐藤亘監督に交代した。「今まで林さんたちが積み上げてきたことが間違いではなかったと証明したい」と語る。基本を大切にした野球を継承しながらも、自身の色を出していった。その一つが冬の打撃特訓だ。秋に投手陣が最少失点に抑えても勝てない試合が続き、中軸で主将の鈴木愛貴選手らの発案で、シート打撃やトス打撃の時間を増やした。「当たる感覚が良くなった」と全三河大会初戦では、打線がつながり、10対9で勝利。準決勝では坂井幸輝選手が、決勝では持田侑闘選手が完封勝利。林さんの教え子が活躍し、下馬評を覆した。
佐藤監督はこれまでチームのテーマだった「応援されるチームに」を敢えて口に出さない。「今は勝つことしか考えていない。一生懸命戦い抜いて、後で振り返った時に勝利だけじゃないと気づいてほしい」と意図を語る。今季は「一丸力」。「大黒柱がいない分、小さな柱が合わさらないと勝てない。全三河はベンチとレギュラーが熱い思いで一つになれた。目標は甲子園出場」と林さんらの思いを背負って戦う。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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