【メッセージも】松井玲奈さん、4年ぶり新作 「カット・イン/カット・アウト」好評 光と影が交差する演劇界を描く

2025/05/23 00:00(公開)
著者の松井さん(提供)

 豊橋市出身の俳優、松井玲奈さん(33)の4年ぶりとなる小説「カット・イン/カット・アウト」(集英社)が評判だ。「小説すばる」連載中から好評だったが、人々の心をつかむ作品の魅力は何か。2月下旬に地元で開かれた映画祭で、松井さんが制作の裏側を語っていた。

 

”切り替わる照明”  2人の人生が交錯

 

 1991年生まれの松井さんは、現在俳優として多数の作品に出演する一方で、2019年に「カモフラージュ」で小説家デビューし、活躍の幅を広げている。

 

 3作目となる今回は「演劇界」をテーマに選んだ。「別の長編を書いていて行き詰まり、編集者さんから『リフレッシュに短編はどう?』と提案をされたのがきっかけ。以前からあの人のことを書いてみたいと書き進めていたら、思ったより筆が進んだ」という。

 

 主人公は、長らく小劇団で活動してきた中年の舞台女優「坂田まち子(マル子)」。元天才子役でアイドルの「中野もも」の代役を劇団の新作公演で務め、一躍脚光を浴びる。もともと無名だったマル子と、芸能界で再起をかけるもも。境遇や年齢が違う2人の人生が一つの舞台をきっかけに交錯するなかでの人間模様を描いた。「演じる人にはスポットが当たる瞬間とそうではない時がある。照明の切り替わりのように人生を描くのは面白いと思った」と語る。

 

長編に意欲「今度は42㌔走れるように」

 

 作品にはアイドルや女優、脚本家から、舞台の観客やマネジャーまでさまざま人物が登場し、視点や心情がめまぐるしく入れ替わる。松井さんは「見聞きしたことを盛り込みながら、ベースはオリジナル。ただ、仕事で立ち振る舞いがすてきな人や話が面白い人に出会った時に、自分の小説に出てきてくれたらいいなと思うことはある。例えば、演出家は今まで出会ってきたさまざまな方を思い浮かべて描いた。『自分がつらい時にこういうことをしてくれたらうれしいのにな』と思うことも(笑い)」と明かした。

 

 今後は「長編にも挑戦したい。累々は50㍍走を何本も走る感覚で、今作は10㌔マラソン。今度は42㌔走れるように。持久力を上げてより良い物語を書いてみたい」と意欲を見せた。

地元の映画祭で作品の魅力を語る松井さん

   ◇

 松井さんは本紙の読者にメッセージを寄せた。

 

 今回執筆した「カット・イン/カット・アウト」は愛知県でも多くの書店さんでお取り扱いいただけていると聞き、大変ありがたく感じています。いつか地元愛知県を舞台にし、聖地巡礼したくなる物語を書いてみたいと思っています。楽しみにしていただければうれしいです。

 

担当編集の髙橋佑希さんの話

 

 1話ごとに打ち合わせをしていましたが、毎回どんな話が上がって来るのか楽しみで仕方ありませんでした。主人公は松井さんより20歳程度上の設定ですが、しぐさや感情の機微、家での生活感などに、リアリティーがあり、松井さんにしか書けない表現が随所に散りばめられています。人物の葛藤や胸の内がそれぞれの視点で色濃く描かれているので、自分だったら誰の立場に共感できるかを考えながら読んでほしいです。

4年ぶりとなる新作(提供)
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北川壱暉

 1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。

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