三重県玉城町の辻村修一町長ら5人が3日、豊橋市有楽町にある遊郭様日本家屋「富久有」を視察し、運営する宮城谷伸江さんから話を聞いた。玉城町内にある個人所有の旧遊郭の建物を活用できるかどうか検討するという。
宮城谷さんによると、有楽町は1937年、田畑だったところに歓楽街「南新地」として開発された。同市小池町から料理店と芸妓(げいこ)街、計約30軒の業者が移転したのが始まりという。その後、東田遊郭の業者らも移転してきたが、戦災で数軒の建物が残るだけとなった。
現在の建物は1965年築の木造2階建て。すでに売春防止法が施行され、遊郭の営業はできなかったが、その様式を守って宮城谷さんの祖母が建てた。両親は料理店として残したが2017年に廃業した。18年に宮城谷さんがリノベーションし、民泊を始めた。瓦ぶきの屋根や銅製の戸袋、格子窓など、遊郭の面影が色濃く残る建物の大広間で落語会やミニコンサート、三味線や琴の教室、着付け教室などを開いている。
それを伝える共同通信の配信記事(2022年)を辻村町長が読んだ。玉城町でも数年前まで数軒の遊郭様式の家屋が残っていた。ところが維持できなくなったとして相次いで取り壊された。現存する1軒の所有者は、町に建物を譲渡する意向を示した。
だが、昭和初期の建築で文化財的価値は乏しい。維持管理費もかかる。そこで、富久有の活用術を宮城谷さんに学び、譲渡を受けるかを判断することにした。
辻村町長らは富久有の広い玄関から建物の中に入り、民泊用にリノベーションしたキッチンや浴場などを案内された。さらに2階に上がり、廊下に向けた装飾窓のある宿泊用室や落語会場として使われている大広間などを視察した。落語を演じる人たちからは「声がよく通る」と評判だという。
その後、宮城谷さんから話を聞いた。公的支援はなく、リノベーションはすべて自費。新型コロナウイルス禍もあったが、豊橋落語天狗連(てんぐれん)に入っていたことから落語会が開けたこと、出演者のつながりで多くの人が来てくれるようになったことなどを説明した。
辻村町長らによると、玉城町は世界遺産「熊野古道」の入り口であり、田丸城跡などもある。旧遊郭の建物も人気アニメ「鬼滅の刃 遊郭編」やNHKの大河ドラマ「べらぼう」などの影響で見学に来る人がいるという。辻村町長は「富久有が和の芸能文化の場となっていることに感心した。玉城町でも『本物』を残したいものだ」と話していた。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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