豊橋市は25日、市制施行120周年を記念するロゴマークを決定したと発表した。「120」の「1」を手筒花火に見立てた、かわいらしいデザイン。さっそく評判となる一方で、SNSではこんな声が出ている。「右手と左手の上下が逆では?」。調べてみた。
応募のあった242点の中からグランプリに輝いた長崎市の草野敬一さんの作品。草野さんは過去に広島G7サミットのロゴマークなども手掛けている。
火柱とともに噴出する情熱や未来への発展性、方向性を表現している。市職員や周年記念事業推進会議委員による選定で「シンプルで親しみやすい」「かわいらしい」「手筒花火のモチーフが豊橋らしさを出している」と高い評価を得た。
一方、発表直後に市議の伊藤哲朗さんがX(エックス)にこんなポストをした。「手筒を持つ手の位置が逆なんです!豊川市の記念ロゴマークなら問題ありません。しかし、豊橋は左手が上で右手が下なんです」。市議の土屋祐司さん、石河貫治さんも同調した。
伊藤さんは「羽田祭」などで26年間、手筒を揚げている。デザイン全体は素晴らしいとしたうえで「豊橋式は、一般に右利きであれば左手が上で右手が下なんです」と指摘した。
手筒には上部と下部に持ち手があり、それを使って点火時の横に寝かせた状態から起こしたり、放揚中の姿勢を維持したり、「ハネ」(最後の爆発)の衝撃であらぬ方向へ跳ねるのを抑えたりする。
豊橋では一部地域を除いて「左手が上、右手が下」で、ロゴのように「右手が上、左手が下」には、豊川市で一般的な方法なのだという。伊藤さんは浴衣の前合わせが間違っているようなものと指摘。「手筒の揚げ手には熱量の高い、熱心な人も多い。120周年に向かって気勢を上げていこうという段階で、こうしたことで気持ちが割れてしまうことがあれば非常に残念」と語った。
豊橋祇園祭奉賛会の酒井数美会長によると、片手持ちの「ヨウカン」花火から両手持ちの手筒へ変わっていったという。豊橋式の持ち方は「先人が考えた安全の理にかなった合理的な持ち方」と話す。「ハネ」の衝撃で事故を起こさないためには下部を安定させることが重要だ。また持ち上げや取り回しの面でもやりやすいからだという。
手筒の放揚は厄払いの神事。長年、安全面を気にかけてきた揚げ手らのことを考えれば、正しいやり方を重視するのが当然で「意匠の問い合わせがあれば、左手が上が正式としてきた」と酒井会長は語った。
同市石巻町の「豊橋煙火」の加藤公丈社長によると、豊橋市内では豊橋式が約90%を占めるという。ただ、各地での安全講習では持ち方については地域事情に合わせており「絶対なのは足の位置。右足と左足の真ん中に筒底が向くように抱えろ、と教えている。その基本が守れれば、好きにさせている」と話す。
地域によって右手と左手の上下の違いがあることについては「花火の揚げ方が広まる過程で生じたこだわりや対抗心によるものではないか」と分析し、地域ごとに伝統や言い分があるので正解はないと語った。また伊藤さんらがすぐに気づいたことについて「立派です。それだけ手筒をやっているからこそですね」と話していた。
今後、ロゴマークは市のホームページや刊行物などで幅広く使われる。
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1988年生まれ。三重県津市出身。
地元で数年間地域紙の記者を務めた後、某ゲーム会社で企画の仕事などを経験。新型コロナウイルス禍で紆余曲折あって豊橋市で再び地域紙の記者に。地域の人に地域の良いニュースを伝えたい。
趣味は一口に言うとゲーム。著名なタイトルをすべて網羅しているわけではないが、コンシューマーはファミコン時代から「ドラゴンクエスト」などを親しんでいる。ジャンルは問わず、環境としてはオンライン、カード、ボード、テーブルトークなど手広くプレーしている。
好きなものは甘いもの。犬派。写真は実家の猫。
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