豊川市白鳥町に大型商業施設「イオンモール豊川」がオープンして1年。地域への影響は見えてこない部分が多いものの、当初心配していたほどではないとみられる。「とりあえずソフトランディングできた」の声が聞こえる。「出店して良かった」と話す東三河の店主もいる。
店はスズキの豊川工場跡地に昨年4月4日にグランドオープンした。3階建て延べ11万3000平方㍍で、専門店約190店が入る東三河最大規模の商業施設だ。
豊川商工会議所がオープン1年に合わせてまとめたアンケートによると、市内の商業・サービス業では、約7割の事業者に大きな影響はなかった。一方で2割は売り上げが減った。影響が出た中心は衣料品店だった。売り上げが増えた事業者も飲食店を中心に1割あった。雇用面では、開店と直接関係があるかは分からないが、人材の確保が難しくなり、時給が上昇しているとの回答が目立った。地域住民からは、岡崎や浜松のモールに比べると魅力のある店が少ないので、ブランドの拡充を求める声が多かった。
商議所では「影響が出ている事業者を支援していく。今後もアンケートを続け、影響を探っていきたい」と話す。
市民病院がモールに隣接しており、当初は渋滞の影響で救急車が遅延するとの懸念が出ていた。ふたを開けてみると、渋滞はほとんど発生せず、周辺道路を整備したこともあり、到着時間がわずかだが早くなるケースもある。
東三河から出店した店もある。その一つ「豊川堂」の高須大輔社長は「売上高が順調に伸びている。出店して良かった」と話す。休日や長期休みは親子連れ、平日は高齢者の利用が多いという。モールの集客力で店独自のイベントの反応も良く、売り上げに貢献する。高須社長は「佐野妙さんの『だもんで豊橋が好きって言っとるじゃん!』にイオンモール豊川が登場したのに合わせて開催したサイン会が好評だった。今後も地域にちなんだイベントを展開し、さらに売り上げを伸ばしたい」と張り切る。
また別の食品関係の店は「ゴールデンウィーク、盆、正月の長期連休と、週末、平日との売り上げの差に当初は驚いたが、対応できるようになった。売れ筋の商品も見えてきた。期待したほどの売り上げではないが、利益面ではプラス。今後も頑張る」と話す。
複数の関係者によると、イオンモール豊川全体の売上高は、当初想定通りで推移しているといい、順調なようだ。来店客は「休日でも渋滞がなく利用しやすい」と話す。
店の出店を後押しした竹本幸夫市長は「人口の社会増につながっている。特に女性が増えている。税収もプラス効果が出ている。パート社員がイオンに取られたとの声が聞こえているが、イオンの出店が市にとって良いスパイラルにつながるようにしていきたい」と話す。
【竹下貴信】