多様な学び「フレキシブルハイスクール」へ
県立御津あおば高校は、県が策定した県立高校の再編構想に基づき、全日制と昼間定時制を併置する。地域の課題に対応した科目を取り入れるなどしており、受験生の人気も高い。学校のコンセプトは「Diversity(多様性)」「Inclusive(包括性)」「Global(国際性)」「Sustainable(持続可能性)」。森田恭弘校長に聞いた。
―新しい取組について教えてください。
◆来年度から通信制が新たに加わり、同一校内で全日制、昼間定時制、通信制の三つの課程間をフレキシブルに行き来して学べる「フレキシブルハイスクール」としての運営を計画しています。これは生徒の多様化が進んだ今の時代にふさわしいと言えます。
生徒は、それぞれ得意なことや苦手なことがあります。英語や数学が得意な生徒や苦手な生徒、運動が好きな生徒、不登校経験のある生徒、日本語が苦手な外国人の生徒などさまざまです。
そんな生徒たちがお互いに違いを認め、ともに学び合ったり、助け合ったりできるような環境づくりを進め「みんな違ってみんないい」という標語を掲げ、それぞれが最適な学びができる仕組みを整えています。
―詳しく教えてください。
◆まず教育方針として、国際理解を深めることと英語を学ぶことを柱にしています。毎週木曜の「全校English Day」では、全ての生徒が一日一回は英語を使ったり、一日中英語のみで過ごすクラスがあったりします。その他にも「English Camp」「English Space」などの活動もあります。英語を学びたい日本の生徒と日本語を学びたい外国人の生徒が、英語と日本語を媒介として協働しながら楽しんで学ぶこと、そういった教育活動が、その先の多文化共生社会の実現につながります。
さらに本校では、いろいろな国からの留学生を迎えるだけでなく、海外へ留学します。現在はアメリカとドイツから3人が来ており、逆にカナダに2人が行っています。この夏からは、ハンガリーやメキシコに留学する生徒もいます。日常の学校生活を通して国際感覚を身につけてもらうことを意図しています。
また、本校では約90種類の科目が設定されており、自分の進路や適性に応じて類型や科目を選択することができます。例えば、数学では「基礎数学」から「実用数学」「応用数学」などの生徒のニーズに応じた学校設定科目、日本語を学びたい生徒のための「日本語」、英語以外にも「フランス語」「中国語」「生活スペイン語」など計7カ国語の授業を選択できます。
科目選択はもちろんですが、類型間・課程間異動も可能です。昨年度、昼間定時制から7人が全日制に異動しました。理由は、中学時からの不登校を克服できたことや、日本語力の向上によって、より多くの科目を学びたくなったことなどです。
逆に全日制から昼間定時制へ異動した生徒もいます。これがさらに、通信制併置により異動のパターンが増え、多様な生徒がそれぞれ自分に適したスタイルで学べるようになります。
―教員生活36年と聞きました。学校への思いは。
◆多様性を認め、人はみな違うという前提に立つことが重要です。それぞれの特性に応じた最適な学びにより、学ぶことの楽しさに気づかせ、学ぶことで自分の未来を切り開いていく意欲を身に付けてもらいたい。そして、物事をまず自分の頭で考え、表現できる人材に成長してほしいです。
【本紙客員編集委員・関健一郎】