豊橋市出身のホラー作家、藤白圭さんの長編小説「腐りゆく君と遺された私」(税別1800円)が30日に竹書房から発売された。これまで「意味怖シリーズ」(河出書房新社)をはじめ、児童向けのホラー短編集を多く手掛けてきたが、なぜ純愛小説を書こうと思ったのか。新境地に挑戦する藤白さんに聞いた。
「腐りゆく君―」は、豊橋市を舞台に、ヒロインの蛍夏と幽霊となった恋人の央理の最後の7日間を描いた物語。藤白さんは「最近は余命宣告されて、病死するまでの作品が多いが、亡くなってからの未来をどう生きるかという前向きな話を描きたかった」と狙いを語る。
「ごめん。俺、死んだ」。恋人の央理が幽霊になって帰ってきた場面から始まる。廃墟専門の写真家だった央理は、滑落事故に遭い、命を落としてしまったのだ。蛍夏はカメラを手に、幽霊となった恋人と彼が亡くなった場所まで軌跡をたどる撮影旅行に出かけることに。その道中で、幼い頃の夢と央理との大事な約束を思い出し、生きる原動力を見つけていく物語だ。
藤白さんは、央理をがんで亡くした母と重ね合わせていた。幼少期に布団の中で母の怪談話を聞いて育ち、「間違いなくホラー作家としての原点をつくってくれた」と感謝する。一方で、13年前に母を亡くした際、「仕事で全国を飛び回る生活が続き、『もっと母のためにできることがあった』と罪悪感と後悔と喪失感が渦巻いていた」と言う。
それから数カ月後、知人の勧めではまっていた小説の投稿サイト「エブリスタ」に、「皆がスターになれる場所」というコンクールのキャッチコピーが目に入った。「めそめそしても仕方ないよ。頑張ってみるのもいいんじゃない」。自信がなく迷いもあったが、母がそう背中を教えてくれたような気がした。「短編なら移動中に書けるかも」と作品を応募しようと決意した。結果は選考落ちだったが、同サイトの担当者の目に留まり書籍化。デビュー作「意味が分かると怖い話」は子どもから大人まで謎解きが楽しめると人気に火が付き、「意味怖」シリーズは累計40万部超を記録するベストセラーとなった。
藤白さんは「どうせ無理だとやりたいことをあきらめてしまった人に読んでほしい。どの世代にも刺さる一冊」と力を込める。今後について「夢はホラー界の大家になること。今まで児童書が中心だったが、長編小説にもっと挑戦し、読者層の幅を広げていきたい」と展望を語った。
豊橋市出身で同級生の漫画家佐野妙さんとのコラボもある。藤白さん書き下ろしのショートストーリーに、佐野さん描き下ろし4コマ漫画が合わさったスペシャルな特典ペーパー(全6種)が、豊川堂や精文館書店など6店舗で配布される。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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