家業の後継を期待されながらも、結婚や家庭との両立に悩む人が少なくない。そうした「アトトリ」を持つ親のために立ち上げられた結婚相談サービス「アトトリ婚」が注目を集めている。企画したのは豊橋市の「村井社会保険労務士事務所」代表の村井真子さん(42)。家業と人生設計の両立に苦しむ中小企業の経営者らの声に応え、結婚と事業承継の両立を支援する独自のサービスを生み出した。
「子どもが配偶者選びで跡継ぎであることを理由に断られてしまう」「子どもが未婚で将来が心配」。村井さんが顧客の中小企業の経営者や自営業者から耳にしたのは、そんな切実な声だった。結婚相手が事業に参加することが前提で、スキルの有無や事業への関心、親との相性も考えなければならないため、後継者は自由な人生設計がしづらいのが現状だ。
「アトトリ婚」は、「跡取り(アトトリ)」と「結婚(婚)」からの造語。家業を持つ人の子女が適切な相手を選ぶためのサービスだ。茨城キリスト教大学心理福祉学科の黒澤泰准教授らと開発した診断ツール「ドボン診断」を使い、結婚当事者やその家族の人生観を把握する。その後、キャリアコンサルタントらが家業の後継についての意思や家族構成、将来の働き方の希望、譲れないポイント、親の意向、スキルや経験などを聞き取る。そのうえで後継者に婚活に関するアドバイスをし、希望者には提携結婚相談所を紹介する。村井さんは「結婚とは、単なる『好き』だけでなく、将来像を共有できるかが重要。だからこそ家業の話を最初にできる環境が大切」と語る。
アトトリ婚の立ち上げには、村井さんの原体験も色濃く影響している。士業事務所を営む両親の背中を見て育ったが、後継の話が出るたびに「自分の人生は自由に選べるのか」と悩んだ。その迷いを抱えたまま101回の見合いを経験。自身が「アトトリ」として期待されることに戸惑いも感じ、疲弊した。「誰かと話したくても、共感してくれる人が周りにいなかった」と振り返る。
サービス開始から半年あまり。家業を継ぎたいが結婚に不安を感じていた人を中心に、多様な背景を持つ人々が集まっている。成功事例も生まれており、婚約だけでなく事業継承への一歩を踏み出したカップルもいるという。登録者の1人である40代女性は母親とともに事業を営んでいる。「ドボン診断」では仕事に情熱を注ぐ一方で、家事・育児をパートナーに期待しがちなことが分かったため、家庭のタスク分担について柔軟性を重視する方針を再確認、最終的には46歳で自身も飲食店を営む男性と真剣交際に至っている。
村井さんは「結婚したいを諦めさせたくない。今後は提携相談所や士業との連携を深め、新しい家族が幸せに暮らしていくためのお手伝いをもっとしたい」と話している。問い合わせは「1tonari事務局(村井社会保険労務士事務所内)=QRコード=へ。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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