「養成所のクラスで一番下手だった。でも、辞めなかったのは僕だけだったと思う」。豊橋市出身の声優、浅井響さん(27)は語る。
浅井さんが声優を志したのは、県立時習館高校1年の冬だった。友達の勧めで見たテレビアニメ「ラブライブ!」がきっかけで、アニメの世界に夢中になり、さまざまな作品に触れるようになった。そして、イベントで歌い踊り、観客を爆笑させる声優の姿に、「表現者になりたい」と衝撃を受けた。
2年の春に夢を打ち明けると、両親に「お願いだからやめて」と猛反対された。30万人の志望者に対し生活できるのは1000人以下という過酷な世界だ。一度は大学へ進学したが5年後、アルバイトでためた資金で、内緒で名古屋市内の養成所を受験し合格した。両親には事後報告で認められた。
養成所では試練の連続だった。実力者がそろう中、最初の1年はマイクの前に立つことすら許されなかった。講師から「セリフをラップ調で」と振られ、必死に食らいついたが「私の息子の方がうまい」と一蹴された。40人いたクラスメートが次々と去る中、「一番下手」という自覚を持ちながらも必死にしがみつき続けた。
その執念は2023年に実を結んだ。都内の事務所「STAR FLASH」への所属が決まり、100人以上が挑んだオーディションを勝ち抜いてヒーロー作品の大役を射止めた。「夢がかなった」と涙があふれた。「初の全国区の仕事で、レベルの違う先輩たちを相手にプロデューサーに選ばれたのがうれしかった」と振り返る。
現在は豊橋市に住みながら活動する。「『豊橋の声優といえば浅井』と言われる存在になりたい」と話す。市民センター「カリオンビル」のマスコット声優オーディションを提案し、61人が応募するなど地域を巻き込んだ活動を展開中だ。
自身の劇団「豊橋アート―ポイエーシス」では、8月23日に豊橋をテーマにした朗読劇の上演が「豊橋市民センター」で決まった。「以前は今の実力でプロと名乗ってもいいのかという葛藤があったが、今は自覚と自信を持ってやっている」と話した。
浅井さんは音声のみの「オーディオドラマ」制作にも取り組む。YouTubeで順次配信しており、志望者の表現の場づくりと街おこしを目的としている。1月上旬、市内で収録があり、初心者から経験者まで約20人が参加した。8時間で10本を撮り、参加者は役を懸命に演じ分けた。中学3年のRIRI@さんは「想像をかきたてる演技を心がけた」と話し、浅井さんは「声優を経験できる場所をつくりたかった。ぜひ視聴してほしい」と呼び掛けている。現在公開中の「越えるべき壁」の動画は公式サイトで見られる。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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