【連載】診療室の午後〈9〉大切にして欲しいメンタルケア(光生会赤岩病院)

2025/05/22 00:00(公開)

 「メンタルヘルス」という単語を聞いたことはありますか? 特にここ数年、よく聞いたり、目にしたりすることが増えてきた単語であり、ご存知の読者の方も多いと思います。

 

 「メンタルヘルス」(mental health)とは精神的健康、心の健康、精神衛生、精神保健など複数の意味があり、最近よく問題提起されているのは、職場での「メンタルヘルス」や子どもの「メンタルヘルス」であり、実際には精神的な疲労やストレス、悩みなどの軽減、緩和やサポート、また精神保健医療のように精神障害の予防や回復を目的とする場面で使われています。子どもから大人、高齢者まで、メンタルヘルスの重要性は言うまでもありませんが、きょうは、あまりクローズアップされていない高齢者に多いメンタルヘルスの不調、「うつ」について簡単に説明します。

 

 心に元気がない状態は一般的に「うつ」と言われています。「うつ」は気分の障害であり、くよくよしたり、何もできず、考えも浮かばないような状態のことです。進行すると仕事も手につかず、体はどこも悪くないのに家からも布団から出られない感じになります。「うつ」は年齢に関係なくおこりうる病態ですが、高齢者には認知症と同じくらい重大な問題の一つでもあります。日本、米国それぞれでの研究結果で65歳以上の高齢者の1割はうつ病がある、との報告もあり、日本の一部地域の高齢者では、「うつ」症状が3割以上認められた地域もあった、との報告もあります。

 

 高齢者の「うつ」の原因は、脳の老化に伴うものと認知症が原因になる場合もあります。認知症とうつ病の絡みは判断が難しい場合もありますが、読者の皆さんには、認知症の症状の一つに「うつ」もある、と覚えていただいた方が良いかもしれません。老年期になると、加齢による身体機能の低下により、不安な気持ちが大きくなる方も多く、また年齢的に家族や身近な人との死別も増えていきます。

 

 仕事の面においても、退職などで社会的役割の低下、喪失感を感じることも増え、最近ではそれに加えて老後の経済的不安も「うつ」の原因となることが報告されています。また意外に見落とされてしまいがちですが、持病のために服用しているさまざまな薬剤の副作用で「うつ」症状も出ることがあります。いずれにせよ、悩ましくも難しい問題となる「うつ」症状ですので、心配な点がありましたら、必ずかかりつけの医療機関に相談してください。

 

 そして、そうならないために絶対に覚えておいて欲しい「うつ」症状の予防は、運動です。とにかく散歩、外に出て歩いてください。ご家族やパートナーと一緒ならなお良いです。

 

 高齢者には、「教養」と「教育」が大切だ、とある講演会でもらい聞きしました。「教養」とは「きょうの用事」であり、「教育」とは「きょうの行く場所」だそうです。きょうの用事を見つけ、そこをきょう行く場所にして、歩いて行く、そんな日々の何気ない繰り返しも「うつ」や認知症の予防になるはずです。

 

 誰でも必ず年を取り、生きている限り老いは逃れられません。そしてその過程で皆さんも周りの大切な人も「うつ」という症状に出合うことがあるかもしれません。それは誰かが悪いのでは決してありません。理解と許容、そして予防の励行を忘れないでください。

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