「第20回アジア競技大会」が19日に開幕する。桜丘高校出身で、柔道女子選手としてアテネ、北京の両五輪を連覇した谷本歩実さん(45)は、大会組織委員会のアスリート委員会委員長を務める。大会に懸ける思いや、自身のアスリートとしての経験を聞いた。
―大会の魅力を教えてください。
◆五輪の32競技に対し、アジア大会は43競技あります。なじみのない競技にも触れられる機会です。世界選手権などと時期が重なった影響で次世代の選手が多く出場する競技もあり、まだ知られていない選手の活躍が見られるでしょう。
―谷本さんの柔道人生について伺います。競技に打ち込むようになったのはいつですか。
◆桜丘高校進学後です。中学は陸上部でしたが、桜丘で初めて柔道の仲間ができ、充実した3年間でした。高校1年で手をけがした際、柔道衣を握らなくてもできる背負い投げの打ち込みを繰り返したことが得意技となり、2004年アテネ五輪決勝の決め技にもなりました。
―谷本さんにとってアジア大会とは。
◆トップの舞台に挑む「登竜門」でした。02年釜山大会が初の国際総合競技大会で、日の丸を背負う重みを知り、優勝もできました。しかし06年ドーハ大会ではアテネ金メダリストのプレッシャーに押しつぶされ銅メダル。その経験のおかげで、08年北京五輪の金メダル獲得につながりました。
―招致から開幕までの道のりはどうでしたか。
◆16年の招致決定後、新型コロナウイルス禍や大会への意義が疑問視されることもあり、開催自体が危ぶまれた時期もありました。五輪で勝たせてもらった身なので、自分にできることがあればとアスリート委員長を引き受けましたが、当初は大会のPRイベントに人が集まらず、メディア対応では「盛り上がりのなさをどう責任を取るつもりですか」と追及を受けることもしばしば。しかし、自治体や地域の祭り、企業さんにも出向いて「みんなで一緒につくりあげたい」という思いを必死に話してきました。総合競技大会の本質は競技より地域のつながりの強さにあると思っています。
―力を入れている学校訪問ではどのようなことを伝えていますか。
◆これまで県内の数十校の小中学校を訪問してきました。柔道の選手だけでなく審判や実況、応援などさまざまな役割を子どもたちに体験してもらっています。「柔道をやってほしい」ではなく「挑戦を楽しんでほしい」と伝えています。そうすると「けがをした人を治す医療関係の仕事に就きたい」など、具体的な夢や希望を持つようになります。本物を見せるということの大切さに気づきました。
―選手村を置かない異例の運営です。
◆建設費高騰などから、ホテルに加えクルーズ船やコンテナ型の移動式宿泊施設を活用します。チャレンジングですが、特別感があり、交流も生まれると前向きに捉えています。将来の災害時活用や地方でのメガイベントにも応用できると思います。また、9割の食事をムスリム対応のほか、ヴィーガンやベジタリアン向けの食事も用意されている点もアスリートや関係者にとっては安心です。
―パラスポーツへの思いは。
◆五輪は平和の祭典、パラ五輪は可能性の祭典と言われています。可能性に挑戦する姿、パラアスリートの競技力や物語にも注目してみてください。
―大会への思いをお願いします。
◆原則無観客だった21年東京五輪以来の大規模な国際総合競技大会です。トップ選手を生で見る経験は一生の記憶になり、会場での応援はTEAM JAPANの一員の感覚になります。人間関係が希薄になりつつある今こそ、人と人がつながり感動を分かち合うことがスポーツの社会的価値だと信じています。大会期間中は私も一般ボランティアとして参加予定です。見かけたらぜひ声をかけてください。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。