フクシマ・ルポ④

2018/03/12 00:00(公開)
倒壊しかけた家屋の存在が、復興の道のりの長さを物語る=福島県浪江町で
避難解除1年も静けさ漂う

 復興の一歩を踏み出した浪江町だが、その道のりは長い。車を降りて街中を歩くと、その現実を痛感させられた。
 避難解除からもうすぐ1年だが、人の気配は少ない。時刻は午後1時ごろだが、車はごくたまに通り過ぎるぐらいだ。窓ガラスが割れ、中に家具が散乱した自宅が目に付く。倒壊しかかった平屋建ての家は、張り巡らされた黄色のテープと赤いコーンがその危険性を物語った。
 更地の一角には、故人をしのんで小さな供養塔が建っていた。真昼なのに、音はほとんどしない。風にトタンがガタガタと鳴るぐらいだ。保育園や病院は入り口がバリケードで封鎖され、周囲に雑草が伸びる。「ゴーストタウン」とは、まさにこのような光景を表現するのかと感じた。
 そんな中で、少しずつ人々の生活が戻り始めていた。浪江駅前の商店街には、入り口にブルーシートがかけられた生花店の隣で、新しい飲食店の開店を祝う花輪が置かれていた。
 JR浪江駅前のロータリーには、タクシーが1台待機していた。原発事故後に不通となっていたJR常磐線は昨年4月1日、南相馬市の小高駅~浪江駅間の8・9㌔で6年ぶりに運転を再開した。福島第一原発に近い浪江駅~竜田駅(楢葉町)は依然として不通だが、JR東日本は2019年度中の全線開通を目指している。
 浪江町が昨年12月に実施した住民意向調査によると、回答を得た4092世帯の中で、「すでに帰還した」と答えたのが3・3%の136世帯。「帰還しないと決めている」が最多の49・5%で、「まだ判断がつかない」が31・6%だった。特に、働き盛りの30代は世代別で最も多い63・9%が帰還に否定的な意向を示した。
 それでも「すぐに・いずれ帰還したい」と答えた13・5%(554世帯)の中で、51・8%が「すぐに」または「5年以内」の帰還を希望。帰還後の住居形態は、63・2%が「元の持ち家(建て替えを含む)」と答えた。
 震災前の街に戻るにはまだ相当な月日を要するが、故郷を愛する人がいる限り復興の歩みは止まらない。
(由本裕貴)
飲食店の開店を祝う花輪=同
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