国の重要無形民俗文化財に指定されている奥三河の神事「花祭」をオマージュしたダンス公演「いきのね」が来年2月、横浜市で開かれる世界有数の舞台芸術プラットフォーム「TPAM国際舞台芸術ミーティング in 横浜2019」で再演される。夜を徹して踊り続ける舞手の疲れた体や汗の匂い、嵐のような時間の流れを舞台芸術としての美に作り上げたコンテンポラリーダンス。制作した日本を代表する振付家・山田うんさん(49)=東京都=は「世界中から見に来るたくさんの人に花祭のすばらしさを伝え、世界の人がまだ知らない日本の山にある伝統や文化、今なお息づく素ぼくで誠実な日本人の踊りの種を知ってもらいたい」と話している。
「いきのね」は、2016(平成28)年のあいちトリエンナーレで山田さん主宰のダンスカンパニー「Co.山田うん」が上演。山田さんとダンサーたちは東栄町の月、古戸両地区などを取材し、舞手から舞を学んだ。それを、花祭独特のルールを守りつつ、土間で見せるステップをより躍動的なコンテンポラリーダンスとして披露した。
TPAMは、KAAT神奈川芸術劇場などを主会場に開催。舞台芸術に取り組む国内外のプロフェッショナルが、公演やミーティングを通じて交流し、情報・インスピレーション・ネットワークを得る場で、20年以上の歴史を経て、アジアで最も影響力のある舞台芸術プラットフォームの一つとなっている。
再演は、KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督で俳優の白井晃さんが、16人のダンサーが土間舞台で繰り広げた大群舞を観覧したことがきっかけで実現した。
山田さんとダンサー16人は16日まで、豊橋市穂の国とよはし芸術劇場プラットの事業「ダンス・レジデンス」を活用し、豊橋市内に滞在しながら創作活動をしている。
再演にあたり、4分の1ほど踊りを変更。森の中で踊るような自然の中で立ち上がった、よりダイナミックな踊りを増やした。「舞手の精神性を大切に、誠実だった前回から2年が経ち、現代の東京でダンスをやっている私たちの文化も加えた」と山田さん。
一見、ネガティブなタイトルは「どうやって終わるかはどうやって生きていくかということ。日本人が大事にしてきた礼儀作法、空気感や生命力、身体にしみ込んだ文化を踊りたい」という。
TPAMでも、神楽が行われる古民家の「土間」を表現し、土を盛り儀式的な雰囲気を醸す。「芸術として成立する領域で踊ることを、2年ぶりに再演する私たちなりの踊りで追及したい」と山田さん。
15日午後7時から作品試演会をプラットで行う。申し込み不要で観覧無料。
本番は来年2月16、17両日の2回公演。前売りチケットは24歳以下が4000円で、一般は12月31日まで限定早割で4300円で発売している。問い合わせはCo.山田うん(090・2912・0436)へ。
(飯塚雪)
再演に向けプラットに滞在している山田さんら=プラットで