私立桜丘高校の校長に横山貴美氏が就任した。同校初の女性校長。学校への思いと抱負を語ってもらった。
【聞き手・山田一晶】
-出身は桜丘ではなかった?
◆県立豊橋商業高校から愛知大学経営学部へ進みました。桜丘は怖かったので、受験していないのです。当時はまだ男子部と女子部があり「やんちゃ」な時代でした。
-大学で教員を目指した?
◆スキー部に所属していました。4年間、12月から3月は後期試験以外はずっと山ごもり。おかげで上手になりました。スキーで海外へ行った人も結構いたので、指導員の資格を取ろうかな、とか。軽いノリではなく、私の場合「ガチ」でした。大学4年の12月27日、こちらの学校(桜丘)から電話がありまして。たぶん、豊橋商業経由ですね。教育実習にも行ったので、私を紹介したのだと思います。それで急きょ面接を受けて、採用されました。教員免許も取ったし、あこがれていない仕事ではない。さらに冬休みがあるなあと(笑い)。
-休みにはスキーに行ける、と。
◆ところが、それ以来、スキーに行っていないのです。「時間ができたら滑りに行こう」なんて気持ちがなくなりました。
-仕事がそんなに面白かった?
◆「怖い」と思っていた桜丘高校が、校門をくぐった瞬間から違っていました。当時もやんちゃな子がいましたが、向き合ってみれば高校生。かわいかったし、自分も年齢が近いからよく分かってあげることができた。だから楽しくて仕方がなかった。
-最初に「大変だ」と思ったのは?
◆1年目。当時は21クラスありました。しかも男女共学元年。副担任になったのですが、担任の先生が入院してしまいました。わずか2カ月後の6月から担任をさせられた。そこで頑張ろうと思ったのですが、ある女の子の対応に失敗しました。服装検査でスカートを触ったらとても怒って学校を出ていってしまった。その日の夜、家庭訪問しました。必死で行ったのだけれど、何を話していいか分からない。気持ちはある、逃げたくはないが、教師としての経験はないから一つひとつが体当たりでした。
-うれしかったことは。
◆それは日々です。どんなクラスを持とうが、子どもを愛してきた。子どもたちもそれに応えてくれるんですね。大人と違って子どもたちは本当に純粋。きれい事ではなく、本当です。
-裏切られたりしませんか。
◆それはあります。でも、教職の現場では何回裏切られても生徒を信じてやれ、というのがある。特に桜丘では。学級通信を毎日書いてきました。目の前でごみ箱に捨てられることもあった。原稿用紙に書いて、イラストを貼りながら。それが26年分あります。私の宝物です。
-手書きですね。
◆パソコンにしようと思ったのですが、保護者の方が「先生の字がいい」と。ファイリングしてくれた卒業生もいる。結婚式に呼ばれていくとご両親が「娘の嫁入り道具に持たせたよ」とまで言ってくれました。
-抱負を。
◆子どもに向き合える、寄り添える教育を一段と高めていってほしい、とバトンを渡された。私の役割はそういうところかな、と思います。学校に感謝しています。
-学校の魅力を。
◆学校は将来を30年、40年先まで考えています。現場の先生の一人ひとりの努力で今がある。私は桜丘が一番だという自信があった。桜丘生も自分の学校への肯定感が強いと思います。「桜丘が良かった。桜丘で良かった」と思ってくれる。今、桜丘は人気です。でもそこにあぐらをかいては絶対にいけない。AIロボットが私たちの仕事をするようになっても絶対に変わらないのは人の心。人と人が向き合うことが一番大事だと教え続ける。そこから生まれるものは何にも代えられないと思います。