「イオンモール豊川」が来年3月、豊川市白鳥町にオープンする。ここで働く人は約3000人とされ、地域の商工会議所や商工会は「人手不足に拍車がかかる」と懸念の声が出ている。
雇用形態の多くはパートで、すでに一部職種で募集が始まった。イオン直営の売り場では、500人のオープニングスタッフを募集する。食品レジ、野菜・果物売り場、総菜・すし売り場、肉売り場、魚売り場では採用活動がスタートした。時給は勤務内容で異なり、1040~1290円が提示されている。今後、キッズ売り場、化粧品売り場、衣料品売り場、暮らしの品売り場の募集も始まる。
ハローワーク豊川によると、イオン側は当初、豊川での募集で人が集まるか懸念していたが、選考会を始めたところ順調に応募があり、人員の確保に手応えを感じているという。9月27日にハローワーク豊川で開かれた説明会には、ほぼ定員いっぱいの約70人が来場。関心の高さを示した。
一方で3000人の雇用は、イオンが直営する売り場と専門店街(テナント)の合計。すべてが近隣から募集するわけではないという。すでに雇用されている人が転勤で勤務するほか、別地域での採用者が働くケースもある。地元からどれだけ採用されるかは採用活動が終了するまで分からないが、多くが採用されることが推測される。
豊川商工会議所や市内の商工会は、地域の中小企業のパートの採用に影響が出るほか、時給の上昇につながることを懸念する。豊川商議所は定期的に記者会見を開いており、このところ毎回のように「ただでさえ人手不足。小売店や飲食店など接客業を中心に影響が出る可能性がある。採用が難しくなり、時給が上がれば中小企業の経営に大きな影響が出る」との指摘が出る。御津商工会では、「パートの雇用者が多い業種の企業では、これから人が確保できるのか」と不安の声が出ているという。
豊川商議所は9月下旬に豊川市へ来年度の予算編成に関わる要望書を提出。イオンモール豊川開店に伴う既存事業者への支援強化を求めており、その中の一つに雇用対策の強化を挙げ「大量採用による既存事業者からの雇用移動が懸念される。雇用支援策の実施を望む」とする。
一方で竹本幸夫市長は9月の定例記者会見で、「3000人の雇用が生まれるのは、地域にとってインパクトがあり、プラスに働くと考えている。活性化につながる」と期待する。
実際の影響は今のところ未知数という。名古屋市やその近郊など都市部にモールが出店した場合、目に見える形で雇用への影響は出ていない。今回は地方都市の豊川市で過去のデータが少ない。
パートが勤務する場合、一般的には通勤時間でみると車で20分以内が好まれる。豊川を中心に豊橋などから働き手が集まる可能性が高いとみられる。
2020年の国勢調査によると、豊川市民の就業者総数は9万6606人。役員や自営業者らを除く雇用者は8万499人。内訳は正規5万2433人、派遣2808人、パート・アルバイト2万5258人になっている。完全失業者は3027人いる。数字には市外に勤務している人も含まれている。単純に計算はできないが3000人の雇用は、豊川市民のパート・アルバイト数の1割以上に当たる。
ハローワーク豊川では「影響が分かるのは、専門店街を含むすべての採用が終了した時。影響がみられた場合は、速やかに地域の企業を支援していく」とする。
【竹下貴信】
来年3月にオープンするイオンモール豊川。建物の工事が進む=豊川市白鳥町で