豊川稲荷がこの数年、これまで以上に参拝客を増やす取り組みに力を入れている。外部の団体と連携しながら、「ヨルモウデ」などを展開する。稲荷では「寺を護持するために、さまざまな取り組みをしている」と話す。
2021年から始まった夜間参拝イベント「ヨルモウデ」。境内をライトアップやプロジェクションマッピングで彩る。昨夏はDJKOOさんも登場して盛り上がった。これまでの累計入場者は10万人を超える。
富裕層向けの地域一体型エンターテインメントツアー「叶-KANAE」が始まる。東京のラグジュアリートラベルツアーを手掛ける「OUGI」と、地元の商店街で構成する「KANAE推進協議会」が企画。豊川稲荷と地元商店街を巡り、さまざまな体験をするツアーで訪日外国人をターゲットにする。
23年から新たな土産としてカップうどん「精進味噌煮込みうどん」と「禅カレーうどん」の発売を開始した。肉や魚を使わないように工夫した商品で、独自の土産として評価される。
さらに今年11月には新法堂の落慶法要、26年には「午年開帳」、30年には本殿100周年を記念した「大開帳」をする。また食品ロス対策として、正月に飾る大鏡餅は、今年から中に発泡スチロールを入れて、外側に餅を覆う構造にした。一方で伝統行事も重要とし昨年末、十数年ぶりに「大法会餅つき」を行った。
これら取り組みもあり、メディアで取り上げられる回数も増えて認知度が向上。今年の三が日は、近年で最も多い185万人の参拝客が訪れた。
周辺でも変化を感じており、関係者は「近年は誘客に積極的になっていて、地域と共存共栄する意気込みが、これまで以上に高くなっている」と話す。
一方で反発もあるという。ヨルモウデは寺の本来の役割と違う、大鏡餅の食品ロス対策は、仏様をだますことにつながるなどの声が届いている。
さまざまな取り組みは、すべて豊川稲荷を護持するため。寺には50人近くの僧侶と、100人を超える職員が運営を支える。境内には数多くの建物があり、維持管理が必要になる。これら費用を確保するためには、参拝客が増え、檀信徒を増やさなければならない。
同稲荷役寮の草間寛之さんは「一日3回の経を唱える勤行(ごんぎょう)や、朝の座禅などをしっかりとやりながら、多くの人が集う場所にしていきたい。地域と共存共栄を目指して、今後もさまざまな取り組みをする方向です」と話す。
【竹下貴信】
これまでに10万人以上が訪れた「ヨルモウデ」(提供)
新たな土産として登場したカップうどん