【コラム】違いを楽しむベルギーライフ〈42〉日本とは異なる病院事情(金子ヴァンダイク房代)

2024/11/17 06:00(公開)
総合病院の入り口にあるカフェは品ぞろえも豊富

 超がつくほど健康な夫のマークと一緒に暮らしていると困ることのひとつに病院があります。風邪をこじらせ中耳炎になったり、乾燥が原因で皮膚炎になったり、歯科検診があったりと、病院にかかることは避けられません。

 

 日本ならいつも行くクリニックや病院に駆け込めばすむのですが、ベルギーではそうはいきません。症状が軽い風邪などの場合、まずはホームドクターに予約を入れてからでないと診てもらえないのです。夫に予約の電話をお願いし、やっとのことで診察にこぎ着けたとしても、さらなる苦難が待ち受けています。

 

 アントワープのほとんどの医師や看護師は英語が話せますが、体質の話など微妙なニュアンスになるとうまく伝えられず、最初は本当にコミュニケーションの難しさを感じました。また多くのホームドクターはマンションの一室で診察をするだけで、血液や尿検査、エコーやレントゲンなどは別の専門機関へ出向かなければなりません。もちろん自分で予約を取ることになります。日本のワンストップ診療に慣れた身にはいまだにおっくうです。

 

 では、緊急の場合はどうなのでしょう。医者嫌いの夫は数日間、胃痛が続いているにもかかわらず「胃が痛い、痛い」と言うだけで決して病院に行こうとしません。そんな夫に「病院に行かないなら、胃が痛いって言わないで!」ときつく言うと、ようやく重い腰を上げました。しかしホームドクターはすぐに予約が取れません。痛みに耐えかねた夫は仕方なく救急病院へ行くことにしたのです。

 

 夫によると以前は無料だった緊急医療ですが、緊急でない患者さんがたくさん押し寄せるので有料になったそうです。待合室に入ると音楽がかかっていて思いのほか明るい雰囲気です。

 

 まずは症状を伝えて検査室に入ります。あれだけ毎日痛がっていたのに、病院に来た途端、痛みがなくなってしまったようですが、あたかも痛いような感じで話しています。そして検査結果を待つこと数時間。待つことが嫌いな夫は帰りたくて仕方ありません。しびれを切らした夫はあろうことか「お腹が減ったから帰るって言ってくる」と言って、ドクターを探しに行ってしまいました。しばらくすると「もう帰っていいって!」と満面の笑みで戻ってきました。

 

 翌日、薬局へ行くと処方箋が出ておらず薬をもらえなかったのですが「胃の調子が悪い時は空腹感もないから、仮病がバレてたんじゃないの?」と言うとバツが悪そうな顔をしています。でも、もう胃の痛みがなくなったようなんです。一体どんな治療をしたのか、不思議です。

 

 さて、昨年骨折した親指が治ったはずなのに曲がらないので、心配になり総合病院の整形外科にかかったことがあります。エコー検査の結果、若い女性医師から注射か手術が必要だと伝えられました。結局、日本で手術を受けたのですが、術後なかなか痛みが取れないためベルギーで診てもらうとハンドセラピストを紹介されました。実は今でも痛みがあるためハンドセラピーを定期的に受けています。

 

 日本ではあまり耳にしない「ハンドセラピー」ですが、いわゆる手の専門家がけがや傷の症状に合わせてマッサージや指の運動、日常生活でのアドバイスなどをしてくれます。医師からのバトンを受け継ぐセラピストは生活に欠かせない存在なのです。私の場合、痛みを避けるため無意識に親指を使わないようにしてしまいます。いざ使おうとすると、例えばお弁当のしょうゆの袋が開けられない、車のサイドブレーキのレバーが戻せないなど、セラピストの助言を思い出し意識して親指を使わなければと思うことが多々あります。

 

 ベルギーの医療はヨーロッパの中でもトップ10に入るほど優れているといわれています。総合病院の診察料が請求書払いだったのにはびっくりしましたが、私の経験ではベルギーの医療は日本と同等レベルで安心して受けられます。

 

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