豊橋市に6カ所の特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人「王寿會」が1日に創立30周年を迎える。表浜海岸沿いの豊橋市小松原町の特別養護老人ホーム「王寿園」から始まった道のりは、新型コロナウイルス禍など多くの試練に直面した。石原世光理事長と石原弘丈谷川王寿園施設長に振り返ってもらった。
―現在の心境を教えてください。
石原世光理事長 30年前、私が44歳で始めた「王寿會」は社員が36人でした。今年3月に豊橋市南大清水町に新たに開設しましたが、豊橋市内に6カ所になり、現在では10倍以上の380人の職員が働き、入所と通所を合わせて一日約500人に利用していただくまでに成長しました。「和をもって貴しとなす」という言葉を肝に銘じ、私から従業員まで全員が平等に議論できる環境を大切にしています。
―30年の間で大きな変化は?
石原理事長 まずは平成12年の介護保険制度の導入です。それまでの「措置制度」は、行政がサービスを提供するものでしたが、利用者は自由にサービスを選択するようになりました。経営的要素が強くなり、職員、そしてその家族が幸せに暮らすための収入を確保するという使命感もより強く持ちました。
そしてコロナ禍です。本当に現場への心理的な負担が大きかったです。コロナウイルスに対しては、当たり前ですが職員も家族や日常があり、不安は募っています。利用者様も職員も不安でいっぱいの状況が生まれてしまいました。私にできることはみなさまに笑顔であいさつすることしかありません。それ以来1300日、毎朝職員の顔を見てから一日を始めることにしています。
―今後の経営で考えていることを教えてください。
石原弘丈施設長 時代とともに変化し続ける利用者様の満足度の向上を常に目指していきます。たとえば、これまでの定番だった習字や塗り絵も大切ですが、動画を視聴したいという方やオンラインゲームでほかの場所にいる友人と遊びたい方も出てきています。施設にWiFiも設置しましたが、幅広いサービスの向上が不可欠です。そして私たちの仕事は、利用者様と家族をサポートするということに尽きます。職員は言うまでもなく、ご家族、地域の方にも介護の知識を共有してもらう機会を設けて相互の理解を深め、王寿會に関わるすべての人が健康で文化的な暮らしができる環境整備を進めていきたいです。
谷川王寿園の職員の皆さん。中庭で遊ぶ子どもたちをすべての利用者が見ることができる