温暖化などの影響で、浜名湖で発生している異変や問題を学び、課題解決に動き出す「浜名湖ワンダーレイク・プロジェクト」の取り組みが進んでいる。そのひとつが、生き物の「ゆりかご」の役割を果たす海草「アマモ」の再生だ。近年、急激に減少していることに着目し繁殖力のあるアマモづくりなどの実証実験を進める一方で、浜名湖に関心を高めてもらうツアーを企画するなど将来を見据えた活動に取り組む。
プロジェクトは、日本財団の「海と日本プロジェクト」の一環として一般社団法人静岡UP(静岡市駿河区)が主体となり2023年に始まった。種子植物のアマモは光合成による水質改善のほか、稚魚などが外敵から身を守る隠れ家や産卵場所としての役割を果たす一方で、船のスクリューなどに絡みつき航行を妨げることも。ただ10年近く前から、温暖化をはじめ複数の要因でアマモが急激に減少し、浜名湖の生態系が変化しているとされる。
こうした現状の認識共有と課題解決へ、行政や企業、環境保全活動などに取り組むNPO法人などの団体、小中学校が関わり活動を展開する。具体的には、アマモ再生に向けた有識者委員会を立ち上げ、科学的な分析と繁殖力のある苗づくりの実証実験をしたり、小学校と連携し浜名湖の生き物を観察するフィールドワークなどを実施したりした。
昨年12月には、実証実験をしている浜松市中央区にある浜名湖体験学習施設「ウォット」の中庭に取り組みを説明した看板を設置、来館者に広く情報を発信し始めた。併せて、湖畔を走る天竜浜名湖鉄道と連携し、海洋体験もできるツアーを昨年12月中旬にスタート。ツアーに向けて開いた公募型コンテストで選ばれたヘッドマークを付けた貸し切り列車に乗り、副駅名を期間限定で「アマモ駅」と名付けた静岡県湖西市にある「知波田(ちばた)駅」で降り、近くのマリーナから船に乗って浜名湖を観察するコースを設けた。列車の中では漁業者をはじめとする専門家からアマモや浜名湖に関する説明を聞く時間もある。2回目となった18日には10人が参加し、現状や改善に向けた取り組みなどを学んだり、船に乗って浜名湖の様子を実際に観察したりした。今後も26日、2月8日、22日に実施する予定という。
こうした取り組みについて、静岡UPの事務局は「アマモが復活して豊かな浜名湖の生態系に戻っていく道のりは長い。次代に続く仲間づくりをしてワンチームで取り組みを進めたい」と展望する。
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