軍事色が濃くなった戦前の奄美大島が舞台の「泉の聖女 軍の要塞と白亜の殿堂」が、現地の劇団によって4月12~13日に上演される。脚本は豊橋市在住の布藤聡子さんが手掛けた。豊橋からの観劇ツアーも予定している。
布藤さんは奄美2世。豊橋で劇団などの脚本を手掛けるほか、東愛知新聞でも月2回コラムを掲載している。父で吉田商会会長、吉田廣喜さんが奄美出身だ。
「泉の聖女」を書くきっかけは、吉田さんが2年前に里帰りをした際に現地で購入した「聖堂の日の丸 奄美カトリック迫害と天皇教」(宮下正昭著)という1冊の本だった。1933年から太平洋戦争が激しくなる頃までカトリックは迫害を受け、4000人の信者が強制改宗された奄美大島のことが書かれている。これを読み「ひめゆりには語り部がいて、多くが知っている。島民でもあまり知らないこの歴史に2世の立場から光を当てよう」と、自身もカトリック教徒であることから作品化を決意した。
日本民踊研究会東三支部の支部長で、市内在住の中島豊定玲さんは奄美の出身で「奄美観光大使」。中島さんは一回り年齢が上の姉からこの歴史を聞かされており、布藤さんに情報を提供。脚本は2カ月で完成した。キリスト教の恩恵を受けてきた島で、島の暮らしを守りたい人たちと軍の言うことを聞かないといけないと思う人たちとの間で生まれたあつれきを描いている。
この脚本を吉田さんが奄美を訪れた際に持参したところ、教育委員会経由で現地の「劇団群島」のもとに。森和正代表から昨夏「上演したい」との連絡が布藤さんに入った。「いつか島のカトリック迫害を上演したい」と思っていたという森代表の知る情報も加味し、会話も島の言葉に書き換えた。現地の教会が協力し、無償で稽古場を提供してくれた。現在は週1回、立ち稽古をしている。会場の「アマホームPLAZA」は300人規模のホールで、公演後には地元の教会からの上演依頼も入っている。「いずれ豊橋でも多くの人に見ていただきたい。企画賛同者を募っていきたい」と布藤さんは話す。
初日は4月12日午後7時から、翌日は午後2時から。布藤さん、吉田さん、中島さんも現地に行く。豊橋からのツアーは12日に出発して観劇、翌日は田中一村美術館などを見学して帰る。翌日にゴルフに変更するオプションもある。料金は1人約15万円を予定。問い合わせは布藤さん(090・7435・0863)へ。
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愛知県豊橋市生まれ。大学卒業後、校閲記者として入社。1年後に報道記者に転身した。2020年から報道部長。芸術、福祉、経済・奉仕団体などを担当する。趣味は、かなりジャンルに偏りのある読書と音楽鑑賞。思考のそっくりな一人娘と趣味を共有している。
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