1月より連載が始まった「三河市民オペラの冒険」も本編で11週目。これまで執筆された指揮者、出演者、報道関係者、オペラ評論家、日本舞踊家の方々からは三河市民オペラに対し、多くの称賛をいただき、新たなる可能性についても言及していただけました。また「毎回、楽しく読んでるよ!」「次回のオペラが楽しみ!」と読者の皆さまからの期待や反響もすさまじく、うれしい限りです。多くの関心と期待を寄せてくださる全ての皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
2017年オペラ公演「イル・トロヴァトーレ」では、「熱い舞台と熱い客席が一つになって、魂を揺さぶった類いまれな公演として日本のオペラの歴史に残る作品」として、日本オペラ公演最高峰の一つの賞である「第26回三菱UFJ信託音楽賞」を受賞することができました。団体としては、2023年オペラ公演「アンドレア・シェニエ」上演後、「第10回JASRAC音楽文化賞」、また「令和5年度 愛知県芸術文化選奨文化賞」も受賞いたしました。このことは、我々の活動を勇気づけ、地域の活性化及び芸術文化の振興や向上、すなわち街づくりや人づくりといった、我々の活動目的に高評価をいただけたものと考えます。
三河市民オペラの強みは、音楽関係者でないビジネスマンがオペラ制作の環境を整えていることだと考えます。総合プロデュースをした後は、音楽や舞台芸術に関することには一切口を出さず、その道のプロに任せます。気にするのは、お金・スケジュール・練習会場・関係者の宿泊、食事、移動手段など。稽古期間中は、個人の経験やネットワークを活用し、出演者や観客の熱量を上げる仕掛けを作ることだけに集中します。音楽関連の常識や慣習を持ち合わせていないので、フットワーク良く果敢に新しいことに挑戦ができたりします。
手売りのチケット管理が大変だと感じた時、オリジナルチケット販売管理システムを構築しました。立ち稽古の際、小道具の量が多くなり運搬や保管が大変になってきた時には、2㌧トラックを2カ月間レンタルしました。練習会場確保に困った際には、PTAで培った人的ネットワークをフル活用し、学校の体育館を借りたりもしました。さまざまな職種や経験を持ち合わせたメンバーが委員会に在籍しているからこその発想です。音楽業界人にとっては、我々三河市民オペラは型破りな集団に見えているのかもしれません。
そんな三河市民オペラも、近年の物価高騰の荒波には逆らえません。10年前と比べても、オペラを取り巻く環境は劇的に変化してきました。以前と全く同じ演目を上演しようとすると、全体経費は少なく見積もっても30%増し。企業からの協賛金や補助金・助成金等の増額がないと仮定すると、チケット代はなんと2倍以上の金額にならないと採算が合わない計算に…。周囲の期待と経済的な現実との狭間で、三河市民オペラはどこに向かうべきなのでしょうか。
過去10回の連載では多くの執筆者が「熱量」に言及しました。私が関わった過去3回のオペラ「トゥーランドット」「イル・トロヴァトーレ」「アンドレア・シェニエ」は全て豪華な舞台セットが組まれ、日本トップクラスのソリストが勢ぞろいし、イタリア語で上演されました。そこにオーケストラと三河市民オペラ合唱団が組み合わさり、会場で感じ取れるような爆発的な「熱量」を生みだし、髙評価を受ける事ができました。豪華なセットや布陣だから、どこにもない熱量が生まれたのかというとそうではなく、場の空気に熱量を送り込めるメンバーが三河市民オペラには属しているから、またそれを可能にする仕組みを持っているからこそ爆発的な「熱量」の生み出しを可能にしています。
次へ進むとすれば、費用の関係上、以前のようなきらびやかな舞台からサイズダウンする必要性が生じるかもしれません。しかし「熱量」が減ったり、目的がブレてしまったら三河市民オペラではなくなります。その事をしっかりと理解すれば、新たなる冒険は始められます。
「アンドレア・シェニエ」プロジェクトの際、アウトリーチとしてソリストの豊城中学への出前授業を行いました。演奏やお話を聴いていた子どもたちのキラキラとした目が印象的で、今でも脳裏に鮮明に残っています。芸術は,人々に楽しさや感動,精神的な安らぎ、また生きる喜びをもたらし、人生を豊かにしてくれます。目的の中心に「教育」を置き、活動を再開するという選択肢も悪くないのではないでしょうか? 変化を恐れず、果敢に新しいことに挑戦をする。三河市民オペラらしい活動をしていく事こそ、我々に課された使命と考えます!
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2013年オペラ公演「トゥーランドット」制作より委員会に参加。株式会社豊橋テクノサイエンス代表取締役社長、豊橋ロータリークラブ会員、豊橋テニス協会副会長、豊橋市国際交流協会運営推進委員、豊橋ユースオーケストラ理事
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