「第50回社会人野球日本選手権」の東海地区予選代表決定戦で、東海理化が東邦ガスに延長十回タイブレークの末に6対4で勝ち、4大会ぶり5回目の本大会出場を決めた。最終回で好救援したのが高卒新人で豊橋商業出身の北添兼矢投手(19)だ。
北添投手は同点に追いつかれた八回2死一、三塁で登板。力強い直球を武器に無失点に抑えた。試合が終わると、ほっとした表情を浮かべる右腕のもとに仲間たちが駆け寄った。
高校入学時は一般就職するつもりでいた。しかし、2年夏に試合を見に来たスカウトの目に留まり、秋に豊川市にグラウンドのある東海理化の練習に参加。3年夏には主戦兼4番でチームを3回戦進出に導いた。大学数校から声がかかったが、社会人を選んだ。「頑張ればプロを目指せる位置にいるかもしれない。レベルの高い環境でプレーし、ドラフト上位で選ばれたい」と強い思いがあった。
140㌔超えの直球を軸に、打者を圧倒して抑えるスタイル。入団当初は社会人のレベルの高さに自信を失いかけた。実戦では、高校時代に武器にしていたカーブやスライダーが捉えらえ、直球も思うように空振りが取れない。4月に長野県内であった「第66回JABA長野大会」の七十七銀行(宮城)戦では、八回から登板し2失点。逆転を許しチームも敗れた。「コースに投げ切ってもまだまだなんだな」と投球を見つめ直した。
投球スタイルに迷っていると、先輩投手や捕手から「若いうちは真っすぐを磨け。変化球でタイミングをずらすのは年を重ねてもできる」と助言を受けた。「常時150㌔を出し続け、分かっていても打てない直球を投げたい」と方向性が定まった。
入社後の生活は高校よりも忙しい。午前6時過ぎに起床し、同8時半に出社。午後1時半から5時半まで全体練習に参加する。夜は「瞬発力と出力を上げたい」と先輩を参考にして、ウエートや体幹トレーニングで汗を流している。「練習量が多い。特にランニングメニューが最初はきつかった」と苦笑する。
球速は入団当初から3㌔アップ。「直球を打ち込まれることもなくなった」と手応えを語る。一方、走者のいる場面で球威が落ちてしまうこと、1年間を耐えられる体づくりが今後の課題だ。
「社会人は会社の名前を背負ってプレーする。高校時代は言われたことをやっていたが、自分に何が合っているのかは常に考えないといけない」と力を込める。目標は「都市対抗優勝。将来的にはエース格の投手になり、3年後はプロに」と明確だ。大きな夢に向かって一歩一歩着実に成長を続けている。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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