「教員と正社員への道開く」
2016(平成28)年末、日本には過去最多238万人以上の外国人が在留する。
その一方で、90年の入管法改正を機に、急増した出稼ぎ日系人を両親に持つ「デカセギ第2世代」など、日本で育った外国籍の子どもたちの高校卒業後については正確に把握できていないのが現状。豊橋市内に通う外国籍生徒の半数が卒業後の進路が不明という調査もある。
人口が減少する日本は、外国人を単純労働者として受け入れ続ける一方で、豊橋工業高校の教員らは外国籍生徒たちを正社員の道へと引き上げる。
NPO法人フロンティアとよはしによると、外国籍の親が持つ進路の情報量は日本人に比べ圧倒的に少ないという。子どもも卒業後の進路が明確に定まらないでいるために、進学や就職がおぼつかず、キャリアプランの必要性を訴える。
授業が終わった午後9時、資格取得を目指す生徒たちは居残り、座学や実技の腕を磨く。ブラジル人の3年ドナシメント・ファビオ・ガブリエルさん(18)=豊橋市王ケ崎町=も、朝からガソリンスタンドで働いた体で無理を押して、3級技能検定(機械検査)取得を目指し、マイクロメーターを手に自主練習に励んでいた。
ファビオさんも両親が帰国を口にすることがあり「遠い将来の自分は思い描けない。まず目先のことを考えるのに必死だった」となかなか展望が開けなかった。
転機は高校で教員から資格取得への挑戦を提案されたこと。技術系の学校も紹介され、専門学校への進学を決めた。「困っている外国人生徒を助けられるような人になりたい」と、今は教員らのような技術系の指導員を目標にする。
将来のため人前で話したり、自分の意見を伝えたりする練習になればと、生徒会長にも立候補した。
指導する教員にも熱が入り、授業後も深夜まで居残り練習に付き合う。多くの生徒たちは決して裕福とは言えず、「資格受験には費用もかかる。1回で受からせたい」との思いもある。
同校の求人は以前、極めて少なかったが、教員らが会社訪問を続け、生徒1人につき6社ほどが集まるまでになった。
本多芳隆教頭は「立派な大学や有名企業にはいけないかもしれない。でも、一人ひとりが地道に誠実に生きていける道に教師が乗せてやらないといけない」と話す。今年も間もなく新入生が門をくぐる。(学年は3月31日時点)
【取材を終えて】
定時制はある意味で最先端、社会のひずみが集約される所だと言われる。やり直しや生きる力を養う場所としての役割を担い続けるために、教員らは日々奔走する。
外国人だけでなく、不登校や経済的困難などで、日本の教育システムから漏れた子にこそ、学ぶチャンスを与え、這い上がるための支援が必要と言える。
(飯塚雪)