真夏のゾクッと小噺②

2017/07/20 00:00(公開)
三河湾に浮かぶ仏島(蒲郡市西浦町から撮影)
蒲郡・三河湾の仏島

 蒲郡市の沖合、このシーズンは多くの遊泳客でにぎわう三河大島。この南側に、岩だらけの島「仏島」がある。中央には小さな石碑が立つこの島には、かつてテレビ番組「まんが日本昔ばなし」にも登場した恐ろしい伝説がある。
 このあたりは海面すれすれに顔をのぞかせる岩場が多く、船が座礁して死者が相次ぎ「船の墓場」「死者の海」と呼ばれた。ある日、兄弟の船頭が石塔を運ぶために航行していると、突然潮の流れが変わり、岩がそびえる島に引き寄せられた。
 船が傾き、兄弟は石塔もろとも海の中へ。石塔は海の底に沈んだが、兄弟は必死に泳いで逃げようとした。島の頂上を見ると、白い着物の人たちが手招きしている。その顔はドクロのようなこの世の者とは思えない形相だった。気が付くと2人は浜辺に倒れ、しばらく高熱で寝込んだ。
 数日後、生活が苦しい兄弟は再び海に出る。安全な航路を選んだが、再び潮の流れが変わり、あの島に引き寄せられる。ナンマンダブ、ナンマンダブ…。必死におがむと、船がゆっくりと停まった。恐る恐ると顔を上げると、目を疑った。島の頂上に、沈んだはずの石塔が立っていた。
 「彼らがやったんだ」「あの重い石塔を…。この世の者の仕業じゃねぇ」。ここで死んだ者の霊が成仏できずにさまよっていると思うと、いたたまれなくなった。村人と共にお経を唱えて供養すると、不思議なことに島は日に日に低くなり、引き潮の時にだけ顔を出すようになった。
 「日本の民話」(未來社)でも、加藤国吉さんによる話で紹介されている。クルージングで近くを通った際は祈りを捧げてほしい。
(由本裕貴)
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