豊橋中央に、静かにエールを送る人がいる。決勝で東邦の3番手としてマウンドに立った田村幸輝さん(3年)だ。
豊橋中央の髙橋大喜地、砂田隆晴、花井成次、松井蓮太朗の4選手と田村さんは中学時代の「愛知豊橋ボーイズ」でチームメート。3年時の夏の全国大会では主戦としてチームを引っ張り、ベスト8に入った。「元気なチームで、いつもふざけ合っていた。打線が調子づいたら安打が止まらなかった」と懐かしむ。
そして甲子園出場を懸けた決勝で再会した。「一番楽しかった。中学時代のメンバーと勝負できて」。田村さんは延長十一回途中にマウンドに上がった。前の投手が2失点しさらに無死一、三塁。「これ以上は流れを渡さない」と腕を振った。重盗で1失点したが、その後は何とか抑えた。高橋選手には四球を与えた。「抑えたかった」と残念がる。打席前、髙橋選手が「猪木ポーズ」をしたので笑ってしまい、一度プレートを外す場面もあった。
チームは5対6で敗れた。「ずっと甲子園を目指していたので悔しくて仕方なかったが、自分のできることはやれたと思う」と振り返った。試合後、グラウンドでかつての仲間に駆け寄り「ありがとう。頑張って」と伝え抱き合った。母いずみさん(43)は「幸輝はがつがつ前に出るタイプではないので言葉は少ないが、お互い胸に伝わるものがあったのでは」と思いやる。
田村さんは豊橋中央について「バッテリーがすごかったし、打線に勢いがあった。髙橋も中学では制球が悪かったのに、すごい投手になった。本当に野球が好きなんだなって思った」。同じ道を歩んだ仲間だからこそ、その成長が分かる。「横浜とやったら面白い。頑張ってほしい」とエールを送った。
田村さんは愛知大学で野球を続ける。豊橋中央の仲間たちの多くも県内に残る予定で「再戦したら次は抑えます」と意気込んだ。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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