東栄町出身の山本正名さん(76)=名古屋市熱田区=が「奥三河の花祭と国学者」を出版した。明治維新後の神仏分離令を受け、いち早く神道の花祭(神道花)に改変した中設楽村。大きく関与した無名の国学者、中井大介(1811~74年)を丹念に追った一冊だ。
山本さんは簡裁の元判事。著書に天保時代の商人と農民の争いを書いた「江戸の裁判―花祭の里の天保騒動記『議定論日記』」(2018年)と村医者の家伝であり自伝の「坂柿一統記(抄)」(20年)があり、故郷を舞台にした3部作の3作目にあたる。
中井は「江戸の裁判」にも少しだけ登場する。民俗学者、早川孝太郎(1889~1956年)の大著「花祭」(1930年)にもその名があるが、中井が書いたものに対し「信用できない」「牽強(けんきょう)付会だ」などと厳しく評価している。その後の花祭に関する書籍でも取り上げられるが、中井の経歴については「花祭」をなぞるものばかりだという。
山本さんはこの無名の国学者のことがずっと気になっていたが、数年前に知人から「それは弓術書『射学大成』を書いた人物ではないか」と指摘された。豊橋市中央図書館の「羽田八幡宮文庫目録」に収録されており、著者名は藤原直志(中井直志)とあった。中井直志が本名で、中井大介と同一人物であることが分かったという。さらにそこから「日本武術名家傅(めいでん)」にたどり着き、中井は弓道を教えながら俳人としても名の知られた人物と分かった。
遠州引佐に生まれ、若くして浜松藩士となったが脱藩。23歳頃に吉田(豊橋)に来て「青芙」の名で岡崎や吉田の俳諧仲間と交流した。山本さんは「俳諧仲間は、まちの有力者ばかり。その交友の広さがうかがえる」と話す。
その後、三河振草郷に転居。40代で「射学大成」を著した。そして振草郷中設楽村の神道花への改変に大きく関わった。また、長篠城を調査した記録もあるという。
山本さんは「吉田の国学者羽田野敬雄との交流があったのかどうかなど、未解明な点も多い。だが、150年の空白を埋める一冊だと思う」と話している。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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