駅との共存で定住促進へ
イオンモール進出予定地の北約300㍍には、名鉄豊川線・八幡駅がある。豊川市は人口減対策で、鉄道駅を生かしたコンパクトシティの推進と定住促進事業を進めるが、大型商業施設・イオンモールとの共存も大きなカギを握る。「日本一若いまち」長久手市は一つのモデルケースだ。
豊川市は八幡の他、市中心部、国府、一宮、小坂井、御津、音羽地区の鉄道駅を周辺とする7エリアを都市機能誘導区域に指定。通称「まちなか居住補助金」を創設し、同区域への転入世帯に最大3年間の固定資産税相当額や、1人あたり10万円の子育て奨励金を交付する制度を立ち上げた。
また、八幡駅すぐ南側の日立製作所跡地の土地を取得。新文化会館と駐車場の他、住宅用地も整備する計画を進める。この西側には市民病院もあることから、市は人口流出を防ぐ一環で八幡地区を新たなにぎわいの拠点としたい考え。イオンモールも完成すれば、まちの姿はガラリと変わる。
育児支援の充実を図り、「子育てするなら豊川市」を目標に掲げる山脇実市長。若年層の世帯を増やす意味では、長久手市がモデルケースだ。2010年の国勢調査で、人口約5万2000人の平均年齢37・7歳は全国1位の若さ。最新の統計では人口増加率10・7%は県内トップで、全国6位の数字だ。
12年前の愛・地球博も機に、恵まれた自然環境に進んだ宅地開発や次々と誕生する商業施設で、若い世代にベッドタウンとして人気を集める。昨年12月にはイオンモール長久手店が開店。今秋には大手家具店イケアも開店する。
イオンモール長久手店は、愛・地球博に合わせて開業した愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)の長久手古戦場駅と直結。モール開店と同時に「イオンモール長久手前」という副駅名が付き、例年3000人台だった乗降客が昨年度は5500人を超えた。その一方で、周辺は交通渋滞が発生し、プレオープン初日は公共バスが最大2時間以上遅れる事態が発生した。
豊川市では計画地の近隣に市民病院の他、1㌔圏内には学校もある。利用客に鉄道での来店を促す意味でも、八幡駅と商業施設を接続するペデストリアンデッキなどの建設も求められる。
(由本裕貴)