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2017/12/25 00:00(公開)
岸壁の補修工事が行われている豊川事件の遺体発見現場=御津町佐脇浜で
豊川幼児殺害事件で再審開始を

 滋賀県の病院で患者を殺害したとして、元看護助手・西山美香さん(37)が有罪判決を受けた「人工呼吸器事件」で、大阪高裁が西山さんの再審開始を認める決定を下した。捜査当局から自白を強要された疑いがあり、犯人と示す証拠もなく、服役中の田邉雅樹さん(50)が無罪を訴える2002年の豊川幼児殺害事件と酷似する。積み重なる市民の声も受け止め、裁判所は一刻も早く再審を開始すべきだ。


 西山さんは患者の人工呼吸器を外したと捜査段階で自白したが、大阪高裁は司法解剖のデータ「自然死した合理的な疑いがある」とし、自白についても警察や検察の強引な取り調べや誘導に迎合し、虚偽の証言をした疑いがあり信用性は高くないと結論付けた。すでに懲役12年の刑期を終えた西山さんは再審開始に「裁判官に分かってもらえてうれしい」と喜びを爆発させた。
 捜査段階で自白するも裁判開始後に無罪を主張し、決定的な証拠がなく、逆に自白内容に矛盾が浮上する点では豊川事件と似ている。
 検察が主張する田邉さんの自白では、殺害現場に向かう途中、赤信号で停車中に被害幼児にシートベルトをかけたと証言したことになっているが、この信号は当時の時間帯は点滅信号だった。弁護団は今年6月、田邉さんが乗っていた車の同型車を使用した繊維片による実験結果を高裁に提出。「当時の捜査による残留物から、幼児を乗せた痕跡はない」と主張している。
 再審に向けて、特に遺体発見現場の御津町佐脇浜の三河湾での念入りな調査がかぎを握る。弁護団や市民団体「田邉さんを守る会」は幼児と同じ体重の人形を田邉さんの自白通りの位置から海に投げ入れたところ、実際の遺体発見現場とは異なる位置に漂着した。
 海の潮の流れや風など条件はさまざまだが、田邉さんが幼児を投棄したとされる岸壁の構造など、肉眼で現場を見れば彼の犯行に疑問を感じざるをえない。現在、この岸壁は補修工事が行われており、付近が進入禁止となっているが、年明けに工事は終わる見通し。守る会の渡辺達郎さんは「裁判官にはまず現場を見に来てほしい。一人の人間として、現実を見てほしい」と訴える。
 田邉さんの再審開始を求める市民らの署名は9000通を数え、守る会は13日に高裁に提出。来年には1万通を超えるのが確実だ。
 西山さんは共に戦った両親と一緒に涙を流して喜んだ。田邉さんも、福井県に住む両親が信じて待ち続けている。刑期が5年以上残り、両親が高齢なだけに、残された時間は長くはない。
(由本裕貴)
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