豊橋に完全予約制の「自転車屋さん」

2018/08/20 00:00(公開)
完全予約制のサイクルショップ「グローリーパッカーズ」=豊橋市湊町で
 豊川(とよがわ)にほど近い旧東海道沿いにある「グローリーパッカーズ」(豊橋市湊町)は、全国でも珍しい完全予約制のサイクルショップだ。厳しい自転車業界の中で、「一人ひとりのお客さんにきちんと向き合いたい」とあえて門戸を閉じる。
 以前居酒屋だった名残を感じるカウンターの前で、店主の鎌苅恒太さん(46)は客と自転車部品の色や素材をすり合わせていく。身体の各部位を綿密に計測し、ハンドルやサドルの位置、ペダルのポジションなどを調節。さらに自転車の使用用途、その人の趣味・趣向などパーソナルな部分を聞き取る中で、最適な自転車に完成させていく。
 神奈川県鎌倉市育ちの鎌苅さんが東三河へやって来たのは1995(平成7)年春。大学卒業と同時に「自然の中で暮らしたい」と設楽町へ移住し、木こりをしながら、マウンテンバイクの全日本シリーズに参戦。その後、新城市作手でサイクルショップを営みながら、行政と共にマウンテンバイクの振興に励んできた。
 作手を離れ、豊橋で店を開いたのは4年ほど前。当初は予約が必要のない店だった。しかし、修理代を「取られる」というネガティブな表現をした客と出会い、「納得してお金を支払ってもらいたい」と考えるようになり、1年ほど前から予約制に変えた。
 「1人店主で、外出して店にいないときもある。美容院や歯医者のように予約制にした方が、個人と個人のつながりもつくりやすい」と話す。新車販売だけでなく、パンクの修理や日本縦断でボロボロになった旅人の自転車修理など、予約内容はさまざまだが、客足は絶えない。
 一方で、人口減少による販売台数の低下に加え、量販店やインターネットで気軽に自転車が購入できる時代に、専門店の厳しさは増す。そんな中、予約を取るわずらわしさ以上に、客自身の自転車への要求や悩みに向き合い、専門店ならではの知識と技術を合致させることが重要と捉える。
 客がオーバーホール(分解修理)に持ち込む自転車は「30年前に母親からもらった」「亡き息子の病院を見舞いに通った」などそれぞれの歴史がある。比較的安価で物が手に入る現代では、修理するより新しいものを買い替える人も多い。だが、オーバーホールすることで、思い出が価値となり、次につながるのも自転車の魅力と鎌苅さんは考える。「修理して、使い続ける価値の高いものへ、自転車の地位を高めたい」。
(飯塚雪)
予約客の要望に耳を傾ける鎌苅さん㊨=同
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