日本自費出版文化賞の小説部門賞に「ハイネさん」

2018/11/10 00:01(公開)
受賞作「ハイネさん」を持つ住田さん=東愛知新聞社で
 豊橋市在住のライター・住田真理子さん(57)の著作「ハイネさん~豊川海軍工廠をめぐる4つの物語」(四六判、192㌻)が、第21回日本自費出版文化賞(日本グラフィックサービス工業会主催)の小説部門賞を獲得、表彰式がこのほど東京で行われた。
 ハイネさんは豊川海軍工廠をテーマにした作品で、空襲で友人を亡くした女学生、強制的に働かされていた朝鮮人の脱走、空襲で生き延びた女性が母親になり子どもたちと大阪万博に行き空襲の記憶を思い出す、100歳になった工廠元職員の孫との日常生活―の4つの物語で構成する。同著を原作した演劇を桜丘高校演劇部が今夏に上演、話題を呼んだ。
 住田さんは、戦争体験者が高齢となっていく中、各地域の戦争の記憶を書き残すことが重要と考えており、海軍工廠跡地の見学会にたびたび参加していることもあって執筆を決意。空襲体験者の証言や資料を基に書いた。
 審査を担当した作家の中山千夏さんは「素晴らしい構成で、短くて分かりやすい。戦争の非も感じさせ、小説としても力がある。ヒロシマやナガサキのことが忘れかけられている今、このような小説が出てきたことは素晴らしい」と評価した。
 住田さんは「地方の戦争について書いた小説が評価され、とれもうれしい。本を通して海軍工廠の悲劇を知ってほしい」と話していた。
 ハイネさんは昨年7月、これから出版から発売され、今年6月には2刷された。定価1400円(税抜)。豊川堂、精文館などの書店で販売している。問い合わせは同社(0532・47・0509)へ。
(竹下貴信)
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