リニア中央新幹線開業計画が暗礁に
リニア中央新幹線(品川-名古屋)の2027年開業計画が暗礁に乗り上げた。静岡県内のトンネル工事を巡る水問題が背景にある。問題の浮上後、初のトップ会談が26日に開かれ、JR東海の金子慎社長と、川勝平太知事が約1時間半、話し合ったが、結論は出ないままに終わった。東京と名古屋を40分で結ぶ総事業費9兆円の大プロジェクトの遅れは、開業を前提とした東三河の将来像設計にも大きな影響を与えそうだ。
2人のやりとりはインターネットで生中継された。金子社長は「日本の大動脈輸送である東海道新幹線は、災害対策としてバイパスを作る必要がある。1日も早い実現が必要だ」などと建設の意義を強調した。
ただ、報道によると会談後、川勝知事は報道陣の取材に対し、県内の工事の月内の開始を認めない考えを強調した。
背景の「水問題」とは何か。東京から、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜を経て名古屋に至る286㌔のうち、静岡工区は8・9㌔。県北の山間部をトンネルで横切る。この区間を含む「南アルプストンネル(約25㌔)」は屈指の難工事となることが予想される。ところが、他のエリアは着工しているものの、静岡工区は同意が得られず、すでに工事開始が3年近く遅れている。
この区間は大井川水系の源流域にあたる。水系の水量が減少するとして静岡県が工法や対策に疑問を示しており、区間の工事許可を出していないのだ。掘削で流出する大井川水系の水量を全量、戻さない限り、建設を認めないという主張を続けている。
川勝知事はこの日の会談でも「リニアに反対しているわけではない」としたものの「水の問題は、流域市町や県民などが同じ思いを持っている。注意してやっていかなければいけない」とクギを刺した。そして記者団には、本体工事の前提となる準備作業(資材置き場の建設など)についても「準備作業は本体工事と一体であり認められない」と「開業延期宣告」を出したのだった。
これを受けて、JR東海は週明けにも開業延期を正式発表するとみられる。ただ、静岡県の同意が無い限り具体的な開業時期を決定できない状況は変わらない。
仲介役の国だが、菅義偉官房長官は「現時点で27年開業の予定は変わっておらず、引き続き事業主体のJR東海に最大限の努力をしていただき、静岡県とも、引き続きしっかり話し合いをしていただく必要がある」と述べるにとどまっている。
大阪まで延伸したリニア全面開業で、東京、名古屋、大阪の三大都市圏を結ぶアクセスは大幅に向上する。知事らでつくる「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」の会長は大村秀章知事だ。18日には国土交通省、JR東海に対し、早期全線整備を求める要望書を提出した。今月1日の記者会見でも「静岡県と国、JR東海がしっかりと協議をしていただくように、これはお願いを申し上げていきたい」と述べている。
打開策はあるのか。県民として注視する必要がある。
【山田一晶】
実験線を走行するリニア(JR東海のHPから)
静岡工区の位置