昨年12月26日の豊橋市議会12月定例会で、従来は市長の決定事項だった契約解除を新たに議会の議決案件とする条例改正案を可決した。長坂尚登市長が計画中止を掲げる多目的屋内施設(新アリーナ)と豊橋公園東側エリア整備運営事業も対象に含まれた。契約解除への協議を申し入れた長坂市長の方針に今後、この条例がどんな影響を及ぼすのか。
改正条例は、契約解除に関し、市議会の議決を経て結んだ事案は解約時も議会の議決要件とする内容だ。改正案に反対する新しい豊橋や共産からの質疑では、議決要件を定めた地方自治法96条が焦点となった。
96条1項は条例の新設や改廃、予算や決算など15項目にわたる議決要件を盛り込んでいる。さらに2項では、法定受託事務や国の安全など政令で定めるものを除き、それ以外の事案を「議会の議決すべきものを定めることができる」と規定している。
質疑で反対派は、地方自治法に明文化していない点を指摘。提案した自民と公明、まちフォーラムの市議らは「法が契約解除を想定していないのではないか」として、契約時の議決の重みを解約時も同等と主張した。即日の提案と採決、法解釈などの議論は堂々巡りとなったが、賛成多数で条例案は可決された。
総務省は2005年12月の地方制度調査会で、96条2項について、議会の権能拡大の観点から「議決事件の条例による追加を可能とする規定」の活用に努めることと答申している。併せて、規定の活用で「各地方公共団体の実情に応じた議決事件の追加を図られることが考えられる」とも述べている。
翌27日に改正条例が市へ送られた。長坂市長は26日の取材に対し「前例のないことなので、法的精査をしたい」と述べた。条例は市側で20日以内に点検した上で、法的に問題がなければ今月15日に公布、施行される見通しだ。
施行されれば、新アリーナ計画は市長権限で解約ができなくなる。法的な解釈を巡る結論は長期にわたることが予想される。市長就任直後の11月18日に契約解除の協議申し入れについて、方針の維持か転換かの判断に注目が集まる。
さらに、市民団体の「豊橋新アリーナを求める会」が、市議会へ提出した計画継続を求める請願が12月20日に賛成多数で採択された。付帯事項として市長は2月25日までに、計画継続に関する事務処理の経過や結果などを文書で報告することになっている。
条例改正で計画の解約手続きは事実上封じられた格好の長坂市長。議会採択された請願への回答で、現行計画に賛成する民意に対する前向きな回答も求められている。
2月中旬は新年度予算案を発表する。すでに今年度補正予算で今後30年間の新アリーナ関連事業について総額約230億円の債務負担行為を盛った。新年度予算案に関連事業費が計上されるかも注目が集まる。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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