マスターが旅立ち2年 「フルハウス」の今

2021/02/23 07:00(公開)
数々のボトル(店のFBから)
 初めての客に出す最初の1杯は、ジン・トニックだったという。豊橋市広小路1に「フルハウス」があった。「市内最古のバー」とされる。夜は海外からも愛好家が、レアなウイスキーを求めに来た。マスターの死によって店を閉じて2年になる。許可を得て店内を見せてもらった。
 狭いシャッターが大きな音を立てて開いた。急な階段。真っ暗だ。無人の建物の、独特のにおいがする。
 2階に上がった。店のフェイスブック(FB)の表紙にある花の姿の照明が辺りを照らした。思ったより狭い。
 マスターは清水宏道さん。2019年4月16日に亡くなった。享年59。食道がんだった。5月に誕生日を控え、店の40周年とともに祝う準備が進んでいたという。
 遺体を引き取る親族が見つからず1カ月半の間、葬儀社で安置され、市の福祉葬という形で弔われた。ごくわずかな知人らが見送った。
 目の前の棚には磨き込まれたグラスがあった。カウンターの反対側には国内で2台しか残っていないというコーヒー豆の焙煎機。こだわり抜いたアクセサリーもそのままになっているという。
 ただ、FBで見た希少で膨大な酒のボトルは、すべて棚から消えていた。
 清水さんが毎日のように手入れをしていたというゼンマイ式の掛け時計があった。針は5時44分を指して動かなかった。その日止まった店の時間を支配するかのように。
【山田一晶】
今は棚には何も残っていない
在りし日の清水さん(FBから)
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