アウトドア競技の「オリエンテーリング」の選手で設楽町の地域おこし協力隊員として活動する伊藤樹さん(25)が、6月にデンマークである世界選手権に日本代表として出場する。選手として設楽町の名を国内外に発信し、町内で競技の普及に務める。
浜松市出身で高校時代に5000㍍、3000㍍障害の選手だった。横浜国立大学進学後、オリエンテーリング部に入った。「日光の山間部でトレーニングした時に、森の中でパキパキと音を立てながら走ったのが楽しかった」と振り返る。
競技で欠かせないのが地図。公平性を保つため、選手は大会が催される場所に事前に入れない。レース直前に地図を受け取り、通過するチェックポイントの位置、コース周辺の地形を読み取る。「ポイントは道から外れた場所にある、道なき道を突き進む。知らない場所を満喫する楽しさがあります」と競技の魅力を話す。
2016年に世界ジュニア選手権、18年に世界学生選手権、19年と21年に世界選手権に出場した。昨年チェコであった世界選手権では「ヨーロッパの選手は突き進むことをためらわない。その精神を学んだ」と語る。
その後、昨年10月に長野県であった全日本ロングオリエンテーリング選手権で優勝し、3度目の世界選手権出場切符を手にした。
協力隊は、先代の戸上直哉さんと麻美さん夫妻が設楽町に移住してオリエンテーリングの普及に努めたのを引き継ごうと応募。自らも昨年10月に移住した。名倉地区に住み、森の中を駆け抜けるなどのトレーニングを重ねている。
今月2日には田峯の段戸裏谷原生林「きららの森」で、設楽中学校1年生向けに体験会を実施した。タイムを競うのではなく、ポイントを巡って写真撮影する「フォトロゲイニング」を企画し、生徒は地図を片手に森の中を巡った。「難しい場所に設けたポイントにたどり着いた生徒もおり、うれしかった」と感想を述べた。
世界選手権は6月26~30日にデンマークのバイレで開かれる。「ヨーロッパ勢が強い。今度は決勝レースを走りたい」と目標を語る。
【安藤聡】
中学生にフォトロゲイニングを指導
昨年10月の全日本選手権で(提供)