豊橋市立八町小学校で、すべての授業を英語のみでする「イマージョン教育」が始まって2年余り。児童の英語を聞く力が大きく向上するなど成果が出る一方で、中学校へどうつなげていくのか課題もある。
グローバル時代が到来し、英語教育の重要性が高まる中、公立学校では国内初の取り組みとして2020年度に始まった。児童301人のうち、約半分が受ける。
ネイティブの外国人講師と、日本人の英語の資格を持つ教員がペアを組み指導する。教える内容は、日本語で授業する子と同じ。社会、算数、理科などを、英語で教える。教師だけでなく、児童が質問したり問いに答えたりする時も英語だ。
八町小には日本語で授業をするクラスもある。イマージョン教育のクラスと比較して、成績に顕著な違いはなく、十分な知識を伝えられている。
英語組の大きな成果は聞く力が大きくアップしたこと。授業の中でシャワーを浴びるように英語を聞くことで力がついた。6年間続けることで、聞く力はさらに向上し、英語のテレビ番組を字幕なしでも理解できるまで達する可能性もある。一方で自分の考えを英語で伝えることは苦手な児童が多く、今後の課題だ。
小学校から中学校へのバトンタッチも難しい。小学校は同じ教員がすべての科目を教えられるが、中学校は科目ごとに教員が変わる。
6月13日に公開授業があり、市内の小中学校の英語教員らが視察した。また英語教育の支援などしている「バイリンガルサイエンス研究所」(東京都新宿区)の研究活動の一環として、早稲田大学の原田哲男教授が教員向けに講話した。原田教授は年に数回、同校を訪れアドバイスしている。
原田氏は「私立校では1990年代からイマージョン教育を採り入れている例があるが、公立では八町小のみ。小学校から大学まで一貫教育が可能な私立と違い、公立での難しさはあるが、何としても成功させたい。6年間では短い。中学、高校、大学へとつなげる展開の実現が必要」と指摘した。
八町小は「イマージョン教育を希望する児童は多く、倍率は約2倍。ニーズは大きいと感じている。1人でも多くグローバルで活躍できるような人材を育てるため、一つひとつ課題を克服していきたい」と話す。
【竹下貴信】
イマージョン教育のクラスでは掲示物も英語
今後のイマージョン教育について語る原田氏