豊川高校女子サッカー部が「第33回全日本高校女子サッカー選手権大会」県予選決勝で、聖カピタニオ女子高校(瀬戸市)にPK戦の末に勝利し、創部9年目で初の本大会出場を決めた。その裏には牛田佳祐監督流の指導法と采配があった。
牛田監督は2016年の部創設時からコーチを務め、18年からは「泥船に乗る」覚悟で監督に就任。部を立て直し、21年には高校総体(インターハイ)出場を果たした。だが、これまで選手権には縁がなかった。昨年は出場権を懸けた東海大会の3位決定戦で聖カピタニオにに1対3で敗退。「今年こそは」という思いは誰よりも強かった。
今季から大きく変えたのが選手との距離感だ。勉強や進路の話題への干渉をやめ、「先生にならない」と決めた。牛田監督は本来は「何でも口を出したい性格」と言う。以前は選手と距離が近く「良き先生」として接していたが、一部の関係者から「学校のことを何も知らないのに」と言われることもあった。そこで、今季は選手との間にあえて壁を設けた。
コーチから「ここまでほうっといて大丈夫ですか」と言われるほど。練習もコーチに任せることが多くなり、「チームの戦略や方向性を考えるのに専念できた。私にとっても新たな挑戦」と話す。
新人戦、高校総体を制し、迎えた選手権県予選。シードの豊川は準々決勝で安城学園に、準決勝で愛知啓成に5対0で快勝した。決勝はの聖カピタニオ戦は前半は0対0。後半開始3分、PKを獲得し、エースの濱田優音選手(3年)が落ち着いて決めた。だが、後半20分に追いつかれPK戦へ。
ここで牛田監督の采配がさえる。相手の3人目が外し、決まれば本大会出場が決まる5人目。濱田選手ではなく、主将でキーパーの今井詩子選手(同)を指名した。「相手の監督が選手ごとにキーパーの飛ぶ方向を指示していた。後半の濱田のPKもコースが読まれていたので止められると思った」。データのない今井選手が登場し、会場が静まり返った。「勝ったなと思った」と牛田監督。今井主将も「まじか」と驚いたが、思い切って左上に決めた。全員が今井主将に駆け寄り、牛田監督も喜びのあまりピッチの上に倒れ込んだ。
牛田監督は「負けたら批判される。選択を正解にするのは自分たちだと伝えられたと思う。選手権ではまずは1勝を目指したい」と語った。
29日、高知と対戦する。
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1998年浜松市生まれ。昔からの夢だった新聞記者の夢を叶えるために、2023年に入社した。同年からスポーツと警察を担当。最近は高校野球で泥だらけの球児を追いかけている。雨森たきびさん(作家)や佐野妙さん(漫画家)らを取り上げた「東三河のサブカルチャー」の連載を企画した。読者の皆さんがあっと驚くような記事を書けるように日々奮闘している。趣味はプロ野球観戦で大の中日ファン。
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