「生理の貧困問題」が注目されている。経済的な問題、親の無関心など、さまざまな理由で生理になってもナプキンを自由に使うことができない子どもたちがいる。そんな中、田原市立田原中学校では今年度から、女子トイレ内へのナプキン設置が進んでいる。生理の貧困解消、ジェンダーレスの両面からアプローチした市内では先駆的な取り組みだ。生徒たちに、より生活しやすい環境を整えていくための活動の一環だという。
同校は今年4月からコミュニティースクールとなっている。前年度から教頭や地域コーディネーター、生徒有志のボランティア組織「たはランティア」担当教諭らで「地域学校協働活動本部」を立ち上げ、月1回の会合を重ねてきた。
部活動の地域公開、地域と学校とを結ぶボランティア(ひとなる応援隊)の増やし方など、さまざまな議題で話し合う中、「生理の貧困問題」「ジェンダーレス」のワードも上がった。
同校の女性教員に調査したところ、生理関連の相談や困っている場面に出会ったことがあるかという質問に「ある」と答えた人が多かったという。
そこで、市防災課の備蓄を入れ替える際に、生理用ナプキン(昼用40個入り6袋、夜用16個入り16袋)を確保した。
不透明なボックスにサイズの異なる2種のナプキンを入れ、校舎内の全女子トイレ(9カ所)と体育館(1カ所)に設置したのは盆明けだった。ボックスのそばに「みんなの生理用品」の説明文も掲示した。ナプキンは保健室でも常備しているほか、まとめて必要な生徒には社会福祉協議会(田原福祉センター)に行けばもらえるとの助言も書いている。
ボックスは現在、洗面台の前に置かれている。生徒たちからは好評だが、「洗面台ではなく、個室に欲しい」という要望も多い。トイレ入り口すぐにある洗面台が廊下の人からよく見えること、話に夢中になった複数の生徒が洗面台の前を離れない場合に取りに行きにくいことなどが原因だ。今後は手作りで巾着などを用意し、個室につるす形にしたいとしている。
貧困家庭では、トイレットペーパーを代用する子もいる。「設置後、生徒から『うれしい』という声を聞いた。使われなかったら意味が無い。今後も困ったことは言える環境づくりをしていきたい」と活動本部の一員で、地域コーディネーターの松野弘美さん。
この年代は生理周期が不規則で、突然始まって困る場合も少なくない。「『予備のナプキンを持っていて』と生徒には話しているが、忘れてくる子も多い」と廣中祐希養護教諭。ボックスのチェックや補充なども引き受けており、「ボックス設置後は保健室にナプキンをもらいに来る子が減った。ボックスの中身が無くなると生徒が教えてくれる。持ってくるのが恥ずかしい、言うのが恥ずかしいという子には、恥ずかしいことではないと教えたい」と語る。
「社会福祉協議会との連携もできているので、一般からのナプキン寄贈の周知活動にも力を入れていきたい」と松野さんら。田原中学校から活動が全市に広がることも期待している。
「居心地の良い学校作り、ひいては命を大切にしてもらうことにもつながる取り組み。制服の見直しや靴の自由化など、PTAと相談しながら今後も過ごしやすい環境づくりのために検討をしていきたい」と平井敦校長ら。「生理用品を通し、困った時は頼れる大人がいるんだということが生徒たちに少しでも伝われば」と松野さんは話す。
【田中博子】