朝市を企画の中川さん試行錯誤
豊橋駅前大通の「水上ビル」の朝市が1日にあった。東西約400㍍のアーケード街。ラーメンやパン、陶器などを販売する約100店が歩道に店を連ねた。春風吹く中、家族やカップルらでにぎわった。
朝市は今回で15回目。企画した中川清史さん(41)に、水上ビルに出合った経緯や朝市開催のきっかけなどを聞いた。
ビルは、1960年代に牟呂用水の上に作られた。豊橋駅から近い順に「豊橋ビル」「大豊ビル」「大手ビル」。9棟3階建ての「大豊ビル」を形成するのは大豊商店街。郊外型大型店の影響で、一時はシャッター街になりかけていた。だが、50年以上の歴史を持つレトロな雰囲気が20~40代に人気で、数年の間に約15店舗がオープンした。
中川さんもその一人だ。2018年8月、ジンジャーシロップ店「テンタソビジンジャー」をオープン。高知県産のショウガや三重県熊野産レモンなどを合わせたジンジャーシロップが人気を集める。東大阪市出身で、就職を機に蒲郡市へ移住。スノーボード仲間のイベント出店がきっかけでシロップ作りを始めた。口コミで評判となり、店を開こうと決意。「引っ越した際、豊橋を歩く中で水上ビルを見つけた。雰囲気が良く、人が集まれば伸びると思った」と中川さん。印象に残っていた場所で店を始めた。
痛感したのは、平日の人通りの少なさだった。「休日はイベントがあるとにぎわっていた。だが、普段は誰も通らない。その状況を何とかしたかった」と振り返る。
朝市を開くため、1軒ずつ訪問して出店者を募った。だが、「なぜ休日ではないのか」と疑問が出るなど、前向きな店ばかりではなかった。それでも地道に開催を続けた。初回は30店舗ほどだったが、今では約3倍に。集客効果が認められ、店から「出したい」と言われるようになった。
参加店はレギュラー店とゲスト店で構成される。中川さんと交流のある県内外の人気店や公共施設にも参加してもらう。前回からは、まちなか図書館もブース出展している。いつもの距離感と新鮮さが同居しているのが最大の魅力だ。
水上ビルは、現行法では建て替えが難しい。中川さんは「水上ビルが取り壊されるという話が出ている。なくなっても、跡地で朝市はできる。価値ある『水上ビル』の名前を残すため、できる限り続けたい」と語った。
毎月第1月曜午前10時~午後2時。詳細はホームページ=QRコード=から。
【北川壱暉】