豊橋市の長坂尚登市長は14日、昨年12月市議会で可決した一定額以上の契約解除を議決要件とする条例改正について、議会権限の超越と法令違反の可能性があるとし、審議と採決のやり直しを求める再議(拒否権)を申し立てた。市議会は29日に臨時会を開き、即日採決するとした。
条例改正では市が結んだ2億2500万円以上の契約を解除する際、従来の市長専決ではなく市議会の議決を要する内容とした。長坂市長が契約解除の方針を掲げる豊橋公園での新アリーナ計画の契約解除も議決要件に含まれる。自民や公明などの議員提案で、昨年12月26日の本会議で賛成多数により可決した。
今回は、条例送付の翌日から20日以内の公布期限(15日)までに違法性などが認められ、地方自治法で義務付ける「特別再議」で申し立てた。市長裁量での10日以内の一般再議は見送った。
市によると再議の主な理由として、地方自治法に基づき議決要件の対象ではないと考えられる事務が追加されている▽法や条例の前提となる社会的な事実(立法事実)を欠く―点を挙げた。
その中で、議決事項を定めた自治法96条2項に基づき、条例で議会が議決すべき事項を例示した2012年の総務省通知から「入札や契約など財務関係の事務」が除外される点を指摘。民法の契約解除の定義にも合致するとし、議決対象ではないと主張している。
また、総務省通知を踏まえ市長が担う事務に「予算の調製と執行」をうたった自治法149条2号の規定を元に、契約解除も予算執行に当たるとの解釈が可能とした。
この日は議運で杉浦康夫副市長らが市議らに再議の趣旨を説明。長坂市長は取材に「市としては条例案を法令違反と結論付けた。全国の自治体に影響を及ぼす判断になるので、適法性を確認するプロセスを踏まえず条例を発効させることは、市が認めたということになる」と再議までの経緯を説明した。
29日の臨時会では本会議で条例改正案を再び審議して即日採決する。過半数の賛成で再び可決された場合、市長は翌30日から21日以内に県知事の審査を求め裁定を受けられる。さらに知事裁定に不服なら裁定60日以内に裁判所へ提訴できる。
長坂市長は採決を踏まえた対応について「結果が分からないので今は何も話すことはない」と述べた。
長坂尚登市長が契約解除に関する条例改正案の再議を申し立てたことについて、新アリーナ計画への賛否両派で反応や受け止め方が分かれた。
条例改正案は新アリーナ計画に賛成する自民と公明、まちフォーラムが共同提案した。自民の山本賢太郎政調会長は「法令違反と指摘される理由は解釈の違いなどがあると思う」として、見解の相違だと受け止めた。
今月29日の臨時会へ向けて「法解釈になるため、法律の専門家の意見を踏まえた分析が必要だ。そのうえで市側との議論のポイントを精査して議会審議に臨みたい」と意気込んだ。
計画反対を唱える共産の鈴木みさ子団長は、長坂市長の申し立てについて全面的に支持する考えを示した。
12月定例会では「緊急提案して即日採決すべき事案ではない」「市長持つ本来の権限を狭めるもの」と反対した。再議の申し立ては「当然のことだと思う。法的な根拠などの説明をしっかりと聞き、29日の臨時会では市側の提案を支持する方針だ」と述べた。
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愛知県田原市出身。高校卒業後、大学と社会人(専門紙)時代の10年間を東京都内で過ごす。2001年入社後は経済を振り出しに田原市、豊川市を担当。20年に6年ぶりの職場復帰後、豊橋市政や経済を中心に分野関係なく取材。22年から三遠ネオフェニックスも担当する。静かな図書館や喫茶店(カフェ)で過ごすことを好むが、店内で仕事をして雰囲気をぶち壊して心を痛めることもしばしば。
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