豊橋署が委嘱、啓発活動などで活躍へ
豊橋署は12日、「特殊詐欺対策ニャン(官)」に、雄猫「トラちゃん」を任命した。14日の母の日に向けて、豊橋市内の店でトラちゃんの写真入りチラシを配り、特殊詐欺被害防止を呼びかける。
トラちゃんは13歳。同市中世古町の「イグラ会計事務所」に住んでいる。飼い主で税理士、倉橋健二さんが竹村賢二署長と懇談中に猫の話になった。現在、事務所にはトラちゃんを含め4匹が生活している。同署は2021年12月、倉橋さんらの尽力で「わんわんパトロール隊」を結成した。愛犬家が犬の散歩をしながら交通安全や地域防犯に協力する。今回はその猫版として、トラちゃんが特殊詐欺被害防止に協力することになった。
今年の同署管内は4月末現在、9件の特殊詐欺被害を確認している。前年同期比4件増。被害総額は約1億2000万円で、厳しい状況だ。
この日、ケージに入れられて署長室に来たトラちゃんを、竹村署長が特殊詐欺対策官に委嘱した。報酬として猫のおやつ「CIAOちゅ~る」のセットが贈られた。
この後、「ニセ電話にだまされニャイ!」と書かれ、トラちゃんが載っているチラシ1000枚を菓子店、花店などで配った。このうち「東新町もちや」では、大福餅などを買い求める人に店員が「気をつけてください」と声をかけ、品物と一緒にチラシを渡した。
倉橋さんによると、トラちゃんは事務所員が自動車修理工場から1週間の約束で預かってきた。「新しい飼い主がすぐ見つかる」という話だったが、結局は事務所に住み続けることになった。
ほかに「一太郎」「ゲン太」「ブチ」がいる。すべて雄。捨てられていたり、地域猫にした後に事務所に上がり込んだりした猫たちだ。
事務所の中を自由に行き来しているが、来客があっても逃げないのはトラちゃんだけだといい、今回の”大役”を任された。最初は多くの報道陣に驚いた様子だったが、すぐに慣れ、リード付きの状態で室内の探検を始めた。最後は署長の机の上で寝てしまい、竹村署長が「また連れてきて」と頼んだという。
倉橋さんは「捨て猫だった子が社会のために活躍する。みんなの希望になる」と話している。
【山田一晶】
来店客に詐欺被害防止のチラシを手渡す店員=東新町もちやで
会計事務所でくつろぐトラちゃん