みなさんは、旅行に行こうと思ったとき最初に何をしますか？

　航空券の購入、あるいは、ホテルの予約でしょうか。でもその前に、旅行の計画を立てますよね。いつ、どこに、誰と行くのか、旅行の目的は何か、旅のハイライトは何にするのか、旅行中、何を食べようか。そんなことをまず考えると思います。

　お金を貯めるとき、いやそれだけでなく、お金を使ったり、借りたり、増やしたりするときに最初に考えるべきは、旅行と同じように「計画を立てること」です。節約や貯金をしてお金を貯めることはもちろん良いことですが、それは何の計画もなく旅に出るようなものです。途中で行き詰まったり、トラブルにあったりするかもしれません。

　では、どんな計画を立てれば良いのでしょうか。旅行の計画になぞらえて考えてみます。旅行で大事なのは旅の目的ですよね。お金の計画で言えば、何のためにお金を貯め、将来、何にどれくらいのお金を使いたいか、そのためにどれくらい貯める必要があるかです。それをはっきりさせるためには、結婚、子育て、自宅の購入、退職など、どんなライフイベントが待っているのか、そしてどんな人生をおくりたいかという人生の計画（ライフプランあるいは生活設計と言います）を考える必要があります。旅行の計画で、いつ、どこに、誰と旅をするかを決めることは、人生やお金の計画では、何年ぐらい先まで、誰とどんな暮らしをするのかを考えることに相当します。時間もお金も限りがあるので、人生の何に優先順位を置くかは、旅のハイライトを考えるのと同じですね。

　こう聞くと、「ちょっと大変だなぁ」と思うかもしれません。でも、必ずしも綿密な計画が必要というわけでもありません。どんなに詳しい旅程があっても、実際の旅行がその通りに進むわけでもないし、旅先でのちょっとしたハプニングが旅行の思い出になることと同じです。人生やお金の計画をどれくらい詳しく作るかは、人それぞれで構いません。大ざっぱな計画で旅に出る人もいれば、毎日の食事や移動手段までしっかり決める人もいます。

　人生やお金の計画を作る方法もいろいろです。「ライフプラン」や「マネープラン」という単語で検索してみましょう。金融庁、日本ＦＰ協会、あるいは金融機関のＨＰでライフプランやマネープランの診断・シミュレーションができます。自分で作れそうだったら、ネットや書籍から必要な情報を集めてオリジナルの計画を作ってみましょう。旅慣れた人が自分で一から旅行の手配をするように。

　自分で作るのが難しそうだったら、銀行、信用金庫、証券会社、保険会社の窓口や保険代理店、ＦＰ事務所の人などに相談してみましょう。パッケージ旅行と同じように、多くの金融機関や代理店では、取引する顧客へのサービスとして、ライフプランやマネープランの作成を手伝っています。独自のツールや参考情報を整えている金融機関もあります。有料サービスを利用すれば、自分で作るより綿密な計画になるかもしれません。

　作ったプランを時々見直すことも大事です。天候や交通事情が変われば旅程を見直すように。転職したり、引っ越したり、思わぬ事故にあったりして、予定通りに行かなくなったら人生やお金の計画を修正しましょう。

　最初から肩に力を入れる必要はありません。とりあえず、大ざっぱに計画を作り、お金を貯め始め、少し経ったら計画を見直したり詳細にしたりして、少しずつお金との付き合いを深めていきましょう。

　次回からは、人生やお金の計画を立ててお金を貯め始めた後に、お金を｢ふやす｣｢かりる｣｢そなえる｣｢つかう｣ためのポイントについて説明していきます。

▼こちらも合わせてチェック

第1回：ためる　お金を貯めるときに最初に考えるべきこと

第2回：ふやす　リスクから目をそらさずに向き合おう

第3回：かりる　利息は自己増殖する

第4回：そなえる　保険金、発生確率、保険料の三つを理解しよう

第5回：つかう　キャッシュレス決済を使いこなそう

第6回：金融詐欺　正しく恐れる