児童養護施設は、その多くが第二次世界大戦中に親を失った戦争孤児を宗教家や篤志家が私財を投じて保護したことから始まったこと、親代わりの役割が求められる仕事の特性から、長年にわたって職員が自己犠牲的な働き方をせざるを得なかった状況がある。
制度は改善されてきたが近年、施設では小規模化や地域分散化が進む中で一人勤務や宿直などが増えて職員が疲弊し、職員の確保と育成も困難になっている。このため、労働環境の改善は喫緊の課題だが近年、関連する研究はほとんど行われていない。そこで、私は2016年度に全国各地の施設を対象にした労働問題に関する調査を行い、今年2月に本書を刊行した。
四つの部と16章の336㌻で構成されている。先行研究の分析や労働問題の歴史を踏まえ、職員の労働問題アンケート調査(20施設の職員565人)と小規模化の影響に関するインタビュー調査(6施設の職員18人)をした。その分析から、施設における労働問題と労組の役割を実証的に明らかにした。
正規職員の労働条件は相対的に安定しているものの、労働時間の長さや宿直回数の多さ、有給休暇取得日数の少なさなども影響して、職員の心身のストレスが深刻だった。こうした中でも、仕事にやりがいを感じている職員が約95%と顕著に高い一方で、職員の多くは給与の安さや心身の疲労、休暇の取りにくさなどに不安や悩みを抱えていた。
また、仕事を辞めたいと思ったことがある職員は約61%で、その理由は職場の人間関係や労働条件や労働環境、施設の子どもとの関係が多く、辞めたいと思った時に支えになったことも同様であった。
さらに労働組合の有無別にみると、労組がある施設はない施設と比較して賃金や研修参加率が高い傾向にあることに加え、働きやすい環境がきめ細かく整備されており、職員の多くが労組や社会運動の重要性を強く認識していた。一方、労組がない施設の職員は労組の認知度が低く、労組がある施設と逆の傾向がみられた。
他方で、近年進められている施設の小規模化は、子どもにとっては多くのメリットがあるものの、職員の労働環境からみるとデメリットが多いことも明らかになった。こうした状況を踏まえて、本書では労働環境をどのように改善し、職員集団づくりをしていくかなどの改善策も提示している。
東三河には5カ所の施設があり、本書で明らかになったことと同様の課題を抱えている。労働問題は看護、介護、保育などのケア労働者にも共通している。このため、本書を通して、それらの現場で労働環境を改善するための基礎資料として生かしていただくことを願っている。
(日本福祉大学教授/放送大学客員教授 堀場純矢)
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