JR東海は28日、東三河と名古屋を結ぶ主要な割引切符を3月末までにすべて廃止すると発表した。長年「最も安く名古屋へ行く手段」として親しまれてきた「JR名古屋豊橋カルテットきっぷ」や「名古屋往復きっぷ」が姿を消す。ネットなどで名古屋が”遠くなる”ことへの懸念の声も出ている。
各種報道によると、ICカード乗車券の普及で利用者が減っていることや、さまざまなネット予約が登場していることが主な理由だ。
今回の廃止により、商品のなかでも住民への打撃が最も大きいのは「JR名古屋豊橋カルテットきっぷ」(3560円)だ。1枚あたり890円という圧倒的な低価格に加え、4枚つづりのため「家族4人で使う」「1人で2往復する」といった柔軟な使い方が可能だったが、その利便性が覆る。普通に切符を買うと1340円。また、在来線きっぷに数百円を上乗せするだけで新幹線を利用できた「往復・カルテットきっぷ専用新幹線変更券」も4月末に廃止される。これにより「行きは新快速、帰りは疲れたから新幹線」といった東三河の人々の気軽な新幹線利用が困難となる。
豊川市から奥三河にかけての影響も大きい。「新幹線新城・本長篠往復きっぷ」や「新城・本長篠往復きっぷ」も3月末で廃止される。飯田線沿線から名古屋方面へ向かう際、これまで使えた「奥三河からの通し割引」が消滅するため、中山間地域住民の移動コストは大幅に上昇する。
4月以降、JRが推奨する代替手段は、新幹線の「ひかり」「こだま」自由席に乗れるネット予約限定の「EX早特1」(1400円)だ。しかし、利用条件は極めて厳しい。これまでは「新幹線名古屋往復きっぷ」(1枚あたり土休日1180円、平日1470円)が土休日では値上がりとなる。「EX早特1」は、乗車前日の午後11時半までの予約が必要で、当日に駅の窓口や券売機で購入できない。予約なしで当日移動する場合、新幹線なら2330円、在来線では通常運賃の1340円が必要になる。
JR東海がデジタルシフトを加速させる一方で、スマートフォン操作やクレジットカード決済を条件とする新サービスは、高齢者や学生などの「デジタル弱者」を切り捨てる懸念がある。
これに対し、名鉄は依然として当日購入可能な豊橋―名古屋の往復切符「なごや特割2」を維持しており、1枚あたりの価格(土休日780円、平日890円)でJRを圧倒する。JRが「前日予約」という壁を設けたことで、東三河の名古屋志向ユーザーが、より安価で簡便な名鉄へ一斉に流入するのは確実な情勢だ。
豊橋や豊川の市民からは「土休日の新幹線での名古屋の往復は2360円だった。スマートEXなどの早割を利用しても往復で440円高くなる。そもそもスマートEXは使ったことがなく、使いこなせるのか心配」「JRのお得な切符が無くなると、名鉄も廃止しないか不安。両方なくなれば、名古屋へ行く機会は確実に減る」などの声が聞かれた。
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1967年三重県生まれ。名古屋大学卒業後、毎日新聞社入社。編集デスク、学生新聞編集長を経て2020年退社。同年東愛知新聞入社、こよなく猫を愛し、地域猫活動の普及のための記事を数多く手掛ける。他に先の大戦に詳しい。遠距離通勤中。
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