豊橋市の「多目的屋内施設(新アリーナ)と豊橋公園東側エリア整備運営事業」の事業継続の賛否を問う住民投票は21日未明、賛成多数で事業継続となった。事業に賛成する2団体は20日夜、ネットニュースで「賛成多数が確実」とする速報で一斉に歓喜した。新アリーナを巡っては長坂尚登市長が昨年11月、事業契約解除を掲げ当選した長坂尚登市長が解約協議の申し入れを指示。今後は休止中の工事再開が注目される。
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事業継続に賛成する市民団体「新アリーナを求める会Neo」と「新アリーナ・豊橋公園整備を応援する会」は20日、同市西小池町の婚礼施設にメンバーや支持者ら40人余りが駆け付けた。投票が締め切りられた午後8時、ネットニュースで賛成多数が確実と報じられると、静かだった場内が歓喜と笑顔に包まれた。「新アリーナを求める会Neo」の小林佳雄代表、「新アリーナ・豊橋公園再整備を応援する会」の竹内裕二代表は大型画面の当確を確かめながら、ほっとした様子で握手を交わした。
小林代表は「勝てるとは思わなかった。確実の一報を受け、握手した瞬間は『うそみたい』と叫んでしまった」と興奮気味に語った。
5月下旬に賛成派の組織を立ち上げ、運動期間中は事業継続の必要性と新アリーナの魅力を市民に説いて回った。
投票運動について「一時はもうアリーナがなくなってしまうのかと追い詰められる気持ちにも陥った。結果を受け『助かった』と安堵した」とこの約2カ月の緊張感を思い起こした。
今後は「賛成と反対の両派でそれぞれ課題感を抱えていたと思う。たとえば、市民利用者向けの駐車場確保や興行時の周辺渋滞の可能性など、指摘されや課題は改善策なども要望したい」と前向きに語った。
新アリーナの魅力について小林代表は「コンテンツが山ほど詰められる宝の箱だ。これからの若者たちもアリーナのすごさを感じ、一緒にコンテンツを生み出してくれたらうれしい」と市民で作り上げるアリーナの未来に期待した。
賛成派でつくる「新アリーナ・豊橋公園整備を応援する会」の竹内裕二代表は運動期間で、同じ賛成派の「Neo」との役割分担が奏功したと振り返った。
竹内代表は「Neoの小林代表が情熱的なプレゼンテーションで多くの市民を引き付けていると感じた。運動の途中から自分たちは、SNSなどインターネット上で解説や論点整理などの動画配信に取り組んだ」と賛成への支持拡大への要因を分析した。
賛成多数の結果について「住民投票で事業継続の答えが出た。これからが本当のスタートだ。一方で、反対派の主張にも理解できる点はある。交通渋滞や騒音、興行後のごみ問題など近隣住民への配慮は欠かせない。新アリーナ関連事業を成功させるため、多くの市民を巻き込んでこれらの課題解決につなげることが肝心だ」と述べた。
新アリーナ関連事業は今後、市と事業者の解約協議の場から、事業継続へ向けた長坂尚登市長の工事再開指示がいつになるかが注目される。
自民市議団の山本賢太郎副団長は「長坂市長は就任直後に契約解除へ向けた事業者との協議申し入れを指示した」と過去の経緯を挙げた。そのうえで「市長は市議会などで投票結果を尊重する姿勢を示している。市議会の推進派として投票結果を踏まえ、速やかに事業再開へ向かうよう動きたい」と述べた。
長坂市長就任から約8カ月間にわたる事業休止状態について「事業者への遅延損害金は1日約150万円とも聞く。数億円規模になる。8月臨時会か9月定例会で補正予算措置を求めたい」との認識を示した。
新アリーナに反対していた「豊橋公園の緑を未来につなぐ市民の会」の藤田茂樹共同代表はネットニュースで一報を見て「ショック。意外だ」と話した。
新アリーナ計画に対して14日にあった調査委員会での事業者の話を聞き、「想定していたよりも非常に悪い事業だと思った。浅井市政の時に示された仕組みと、今回の提案はあまりにもかけ離れている。事業費が大きく膨らんでいることに危惧を感じた。これを認めるんだな、と」と述べたうえで「ショックだが、それ以上に豊橋市の未来が心配だ」と懸念を示した。
敗因は、参院選と重なったことで投票直前まで争点を訴えられなかったことや、長坂尚登市長がなぜ契約を解除するのかの情報が出なかったことなどを挙げた。「市の情報は、契約を解除しなければならないという内容がなかった。計画決定の過程に問題がある、これを明確に言わなければいけない」と語った。
今後は「住民訴訟もある。もし何か別の話があれば、大きな問題があるんだということを言わなければならない。努力していく」と述べた。
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