蒲郡市竹谷町大久古で昨年8月27日夜に起きた土砂崩れでは、民家にいた家族5人が巻き込まれ、3人が亡くなった。あれから1年、救助された鋤柄尚美さん(48)と市外にいた妹の北上泰代さん(43)が当時の状況などを振り返った。
土砂災害では鋤柄さん方の裏山が崩れ、父定夫さん(当時78歳)と母眞知子さん(同70歳)、長男の求さん(同32歳)が土砂に巻き込まれて亡くなった。
尚美さんによると、崩れた裏山の異変を感じたのは2020年8月頃。雨が降っていないのに家の隣のミカン畑の地中から水が染み出し湿地状態になりかかっていたことがある。「その時、父が関係機関に連絡していた」と話した。
泰代さんによると、被災した日も山から家の玄関前を通って道路まできれいな水が流れているのを次女が見つけ、定夫さんと眞知子さんがやり取りしていた。
発生時、山側の2階建て母屋に求さんがいた。隣接する平屋建て家屋には定夫さんと黒柴犬の「チョコ」が一緒に寝ていたほか、道路側の部屋に尚美さんが、隣の居間には次女と眞知子さんがいた。
尚美さんは寝ようと思った瞬間、天井から何か落ちてくるのに気付いたが「気が付いていたら倒れていた」「一瞬の出来事だった」と振り返る。身動きが取れず、近くにあったスマートフォンの音声認識機能で119番した。
泰代さんは近所の友人から連絡を受け、住んでいる岡崎市から実家に向かった。到着後、家の状況を見て驚いたが、警察に家の間取りを伝えたり、逐一に警察や消防から報告を受けたりした。
尚美さんは、動けないまま救助動の様子を見ていた。不安にならないよう音楽をかけ、気を紛らわせていた。市民病院に運ばれ、診断の結果、軽傷だった。「冷静になって初めて、けがをしていることに気付いた」と話す。その後、「チョコ」も無事に見つかった。
亡くなった定夫さんは友人も多く、また、温泉地や神社仏閣を巡るの趣味にしていた。定年後、専業でミカン栽培に取り組んでいた。眞知子さんは一緒に温泉地が行くのが好きだったという。求さんは家族思いだった。尚美さんは市外で働きながら、定夫さんが愛したミカン栽培に取り組んでいる。
最後に、2人は「落ち着いたら、助けてくれた人に恩返したい」と話した。
蒲郡市の鈴木寿明市長は27日、土砂崩れの現場を訪れ、亡くなった鋤柄定夫さん、眞知子さん、求さんの冥福を祈った。
この日、長女の尚美さんと三女の北上泰代さんも現場に足を運んだ。鈴木市長は献花後、2人に「市としてできる限りのことをさせていただきます。相談もしっかり応じていきます」などと話した。
報道陣に対し「ほかの土地にも危険が潜んでいることを市民に伝え、いつもと違う現象が起きた場合は速やかに市と情報共有できるようにしたい」と話した。
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愛知県蒲郡市生まれ。2020年、地元蒲郡が好きで東愛知新聞社に入社。同年から蒲郡担当、市政や地域行事、文化など全般を取材。ドローンを使って東三河の名所を空撮したルポ「大二朗記者の空からの訪問」を不定期連載。これまで、三河大島や三河国分尼寺跡、日出の石門などを空撮してきた。ドローン技術向上のため、国家資格「一等無人航空機操縦士」を24年に取得。読者の皆さんが楽しんでもらえる記事と記憶に残る写真を掲載できるよう、日々、頑張っていきます。
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